空き家は住んでいなくても、所有している限り毎年固定資産税がかかります。
負担を減らす方法として、減免申請ができないかとお考えの方もいるのではないでしょうか。
この記事では、申請対象となる制度と手続きの順序を解説します。
固定資産税の減免制度を定める地方税法の規定
固定資産税の減免は、法律によって全国共通の基準が定められているわけではありません。
制度の枠組みだけが地方税法に置かれ、実際にどのような場合に減免するかは各市町村の判断に委ねられています。
減免の可否を判断するのは市町村
地方税法第367条は、市町村長が、天災その他特別の事情がある場合に減免を必要と認める者、貧困により生活のため公私の扶助を受ける者、その他特別の事情がある者に限り、当該市町村の条例の定めるところにより固定資産税を減免できると規定しています。
条文が示しているのは枠組みだけで、具体的な要件は市町村の条例で定めることが予定されています。
この構造があるため、同じ状況の空き家でも、A市では減免を受けられてB市では受けられないという事態が起こります。
住宅用地特例は減免ではない
減免と混同されやすいのが住宅用地特例です。
住宅が建っている土地は課税標準額が引き下げられ、200平方メートル以下の小規模住宅用地では6分の1、それを超える一般住宅用地では3分の1になります。
空き家であっても建物が建っている限り、この特例によって税額は抑えられています。
住宅用地特例は要件を満たせば適用される課税標準の特例であり、所有者が減免を申請して認められる制度ではありません。
申請の対象になるのは、この特例が外れる場面に向けて自治体が用意した別の制度です。
空き家の除却後に申請できる固定資産税の減免制度
申請の対象になるのは、空き家を解体した後の土地に対する減免制度です。
多くの自治体が要綱を定めて運用しています。
制度の内容
制度が設けられた背景と、減免される金額の考え方を確認します。
制度が設けられた目的
住宅を取り壊して更地にすると住宅用地特例の適用がなくなり、土地の固定資産税は本来の税額に戻ります。
この増税が空き家の放置される原因の一つになっているといわれています。
老朽化した空き家を除却した場合に一定期間、除却前の水準まで税額を減免することで除却を促進するという趣旨で制度が作られました。
この減免は、税負担を軽くすること自体が目的ではなく、危険な空き家の解体を進めるための後押しとして設計されています。
減免される金額の算定方法
減免額の考え方は自治体間でおおむね共通しています。
本来の税額と、住宅用地特例があるとみなして算出した税額との差額が減免される仕組みです。
更地になった土地の評価額が900万円で、住宅用地特例が適用されていれば課税標準額は150万円だったとします。
特例が外れると課税標準額は900万円となり、税率1.4%をかけた本来の税額は12万6,000円です。
特例があるとみなした場合の税額は150万円に1.4%をかけた2万1,000円ですから、その差額である10万5,000円が減免されます。
結果として、解体前と同じ水準の負担で済むことになります。
減免が適用される期間
減免が続く期間は自治体によって差があります。
木更津市は減免期間を2年間とし、申請は年度ごとに手続きが必要としています。
坂出市は、土地の売却などで次の利用が決まるまでの期間について税負担の増加を抑えるという考え方から、取り壊しの翌年度から最大5年間としています。
所有する空き家の売却に時間がかかりそうな場合は、自分の自治体がどちらの考え方を取っているかによって解体後の資金計画が変わってきます。
対象となる空き家の要件
要件は自治体ごとに定められているため一律ではありませんが、複数の自治体の要綱に共通して見られるものがあります。
該当しそうかどうかの目安として確認しておくと、窓口での相談がスムーズになります。
空き家であった期間
一定期間以上使われていない住宅であることが求められます。
期間の起算点や証明方法は自治体の定めによります。
閉栓されている電気や水道の記録、住民票の異動履歴などが確認材料になることがあるため、解体前に手元の資料を整理しておくと申請時に慌てずに済みます。
相続した実家で使用実態の記録が残っていない場合は、どの資料が有効か窓口で先に確認しておくことをおすすめします。
勧告を受けていないこと
空家等対策特別措置法に基づく勧告を受けた空き家は、対象から除かれます。
勧告の時点ですでに住宅用地特例が外れているためです。
特例が外れている土地について、特例があるとみなした税額との差額を減免するという計算は成り立ちません。
2023年12月13日に施行された改正空家等対策特別措置法では、放置すれば特定空家になるおそれがある状態を対象とする管理不全空家等が新たに設けられ、勧告により特例が解除される仕組みが導入されました。
放置期間が長引くほど、減免を利用できる余地は狭まっていきます。
申請の手順
減免申請は解体してから届け出れば済むものではなく、解体前から始まる手続きです。
順序を守ることが申請の可否を左右します。
解体前の事前相談
制度そのものを設けていない自治体もあるため、解体を決める前に市区町村の担当窓口へ問い合わせます。
窓口は税務課である場合と、空き家対策を担当する部署である場合があり、自治体によって分かれます。
相談の際に確認しておきたいのは、制度の有無、対象となる建物の条件、減免される期間、申請の締切です。
坂出市では、固定資産税の課税明細書や名寄帳の写しがあれば、住宅用地特例が適用されているかを事前に確認できるとしています。
職員による現地調査
多くの自治体が、解体前に建物の状態を職員が確認する工程を設けています。
この調査は、建物が制度の想定する老朽化した空き家に該当するかを判断するために行われます。
建っている状態でしか確認できない以上、解体後に遡って判定してもらうことはできません。
調査の申込みから実施までに日数がかかることもあるため、解体業者との工事日程を決める前に調査の予約を取っておく必要があります。
解体後の書類提出
工事が終わったら、建物が存在しなくなったことを届け出たうえで減免を申請します。
坂出市では、確認書の交付を受けた後に建物を除却し、税務課へ建物の滅失届と減免申請書を提出する流れになっています。
宮古市は、解体撤去が完了した日付が分かる書類として工事契約書や領収書などを挙げています。
解体業者から受け取る書類は工事完了日の記載があるかを確認し、申請まで保管しておいてください。
減免申請で注意すべき点
制度を利用できるかどうかは、手続きの進め方と解体後の見通しによって変わります。
申請を検討する段階で押さえておきたい制約があります。
事前調査より前に解体した場合
志免町は、町職員による現地調査前に除却工事を行った場合は減免の対象とならないと明示しています。
解体費用の見積もりを取り、業者と契約し、工事を終えてから制度の存在を知ったというケースでは、要件を満たしていても申請が認められません。
補助金と減免を併用できる自治体もありますが、その場合も申請の順序が定められています。
解体を思い立った時点で、税と補助の両方について窓口に確認しておくことが、受けられたはずの軽減を逃さない方法です。
減免期間が終わった後の税負担
減免はあくまで期間を区切った措置であり、恒久的に税額が抑えられるわけではありません。
期間が満了すれば、住宅用地特例のない本来の税額を負担することになります。
先ほどの計算例でいえば、減免期間中は2万1,000円相当の負担で済んでいたものが、期間終了後は12万6,000円に戻ります。
都市計画税が課される地域では、その分も加わります。
解体を選ぶのであれば、減免期間内に土地の売却や活用の目処を立てておくという前提で計画を組む必要があります。
まとめ
空き家の固定資産税について申請できる減免は、建物を所有している状態に対するものではなく、解体後の土地に対して自治体が独自に設けている制度です。
地方税法第367条が要件を市町村の条例に委ねている以上、制度の有無も期間も自治体ごとに異なります。
申請には解体前の相談と現地調査が前提となる場合が多く、工事を先に進めてしまうと対象から外れます。
空き家の解体を検討し始めた段階で、市区町村の窓口に制度の有無と手続きの順序を確認しましょう。



