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地盤沈下の家の症状と修復工法|費用負担を抑える方法も解説

お家の扉が閉まりにくい、床が傾いていると感じることがありませんか?

こういった場合、地盤沈下が原因の可能性があります。

修復には数百万円規模の費用がかかることもあるため、適切な対処が必要です。

この記事では、地盤沈下の症状、原因、修復工法、費用の負担を抑える方法を解説します。

この記事でわかること
  • 地盤沈下した家に現れる症状
  • 地盤沈下が起こる主な原因
  • 修復に用いられる工法・費用相場
  • 費用負担を軽減する方法
目次

地盤沈下した家に現れる症状

地盤沈下が起きた家には、生活の中で気づきやすい共通の症状が現れます。

自宅の状態を見極めるため、4つの症状を見てみましょう。

扉や窓が開閉しにくくなる

地盤沈下が起きた家で起きやすいのが、扉や窓の不調です。

建物が傾くことで枠が歪み、これまでスムーズに開閉できていた建具が動きにくくなります。

例えば…
  • リビングのドアが途中で引っかかる
  • トイレの扉がぴったり閉まらない
  • サッシが滑らかに動かない

ただし、築年数が経過した家では、建具自体の劣化と区別が難しい場合もあります。

判断のポイントは、複数の場所で同じような不調が起きているかどうかです。

家中の建具に少しずつ違和感が出ている場合は、建具の劣化ではなく建物全体の傾きが原因である可能性が高いでしょう。

床が傾いている感覚がある

立ったときに違和感を覚えるといった場合も、地盤沈下を疑うサインの一つです。

歩いていると体が一方向に引き寄せられる気がする、椅子から立ち上がるときに普段より踏ん張りが必要な気がするといった感覚があれば、床が傾いている可能性が考えられます。

築年数が浅い家でも起こりうるため、最近こうした違和感を覚えるようになった場合は注意が必要です。

確認方法として広く知られているのが、ビー玉やゴルフボールを床に置く方法です。

ボールが特定の方向へ転がっていけば、その方向に床が傾いている証拠になります。

より正確に確認したい場合は、水平器を使用しますが、持っていなくてもスマートフォンのアプリで代用できます。

壁や基礎にひび割れが発生する

建物の歪みは、壁や基礎にクラック(ひび割れ)として現れます。

室内では壁紙の継ぎ目に沿った亀裂、窓やドアの角から斜めに伸びるひびが見られることがあります。

外回りでは外壁モルタルの亀裂、基礎コンクリートの縦方向や斜め方向の割れが見られた場合、注意が必要です。

クラックの方向や形状から原因をある程度推測できます。

幅0.3mm以下のヘアークラックと呼ばれる細いひびは経年劣化で発生する場合もあるため、すぐに深刻な問題とは限りません。

幅0.5mmを超える深いクラックや、時間の経過とともに徐々に拡大していくクラックは構造的な問題が疑われます。

基礎コンクリートに鉄筋が見えるほど深く割れている場合は、建物の安全性に関わる深刻な状態であり、専門家による早急な調査が必要になります。

建物と地面の間に隙間ができる

お家の外回りを観察し、建物と地面の間に隙間ができていれば要注意です。

例えば…
  • 玄関ポーチと家の境目に段差ができている
  • 外壁の下部と地面の間に隙間が広がっている
  • 駐車場の土間コンクリートが家側に向かって沈んでいる

家の基礎を支持層まで杭で固定している場合、地盤だけが沈下しても建物は元の高さを保つため、地面と基礎の間に段差が生じることがあります。

この状態を「抜け上がり」と呼び、建物そのものは無事に見えても、地中の配管が高低差で寸断されてライフラインに支障が出る可能性があります。

給排水管の漏水や下水の逆流が起きていれば、抜け上がりが進行している可能性が高い状態です。

建物に異常がないように見える場合でも、外回りの段差と水回りの不調が重なるときは地盤沈下を疑う根拠になります。

地盤沈下が起こる原因

地盤沈下はなぜ起こるのでしょうか。

ここでは、代表的な原因をお伝えします。

軟弱な地盤に建てられた

よくあるのが、もともと軟弱な地盤の上に家が建てられているケースです。

沿岸地域、河川付近の低地、田んぼや沼地を埋め立てた土地などは、堆積年数が浅く地盤が緩い傾向にあります。

沖積層と呼ばれる比較的新しい地層では、家の重みで時間をかけて地盤が圧縮される圧密沈下が起こりやすくなります。

新築時に十分な地盤改良がされなかった場合、家を建てて数年から十数年が経過した頃から不同沈下が始まることもあるでしょう。

地盤調査と改良工事を実施していても、調査結果の解釈が不十分だったり、施工に問題があったりするケースも見られます。

地下水の過剰な汲み上げ

地下水を過剰に汲み上げると、地中の空隙が広がり、上部の土の重みで陥没して地盤沈下が起こります。

家庭用井戸の規模では問題になりませんが、工業用水として大量に汲み上げる地域では広域的な地盤沈下の原因です。

国は工業用水法と建築物用地下水の採取の規制に関する法律で、地下水汲み上げによる地盤沈下が発生しやすい地域を指定し、規制をかけています。

指定地域では都道府県知事の許可なく地下水を工業用水として使用できません。

自分の家がこうした規制地域内にある場合、過去の地下水汲み上げによる広域沈下の影響を受けている可能性があります。

広域沈下では建物の傾きより、地表全体が下がることで床下浸水などの被害が顕在化します。

地震や液状化

地震は地盤沈下の代表的な引き金です。

大きな揺れで地殻が変動し、広域で地盤が沈むケースや、特定の場所が陥没するケースがあります。

海抜の低い地域では、地震後に満潮時の床下浸水で初めて地盤沈下に気づくこともあります。

液状化は、砂と水分を多く含む地盤が地震の揺れで起こす現象です。揺れによって砂と水が分離し、水が地表に噴き出すと同時に地盤が沈下します。

東日本大震災では関東地方の埋立地で広範囲に液状化が発生し、多数の住宅が傾く被害が出ました。

地震や液状化が原因の場合、地震保険による補償の対象になる可能性があり、被害の認定基準に応じて保険金が支払われます。

盛土と切土の境界に建っている

家が切土と盛土の境界をまたぐように建っている場合、盛土側だけが沈下して建物全体が傾く不同沈下の典型的なパターンです。

山や丘を造成して住宅地にする場合、地形を平らにするため一部を切り崩した土を低い場所に盛る工法が使われます。

切土側は元の硬い地盤を残せますが、盛土側は新しく入れた土のため締固めが不十分だと時間とともに沈下しやすくなります。

古い造成地や、池・井戸・地下室を埋め戻した土地に建てられた家でも同じ現象が起こります。

地盤沈下した家を放置するリスク

地盤沈下の症状に気づいた段階で対処せず放置すると、どのようなリスクがあるでしょうか。

建物の安全性が低下する

地盤沈下が進行すると建物の構造材に継続的な負荷がかかり、耐震性が低下してしまいます。

柱や梁が本来想定されていない方向に力を受け続けることで、接合部に疲労が蓄積し、地震の揺れに対する抵抗力が落ちていきます。

築年数が浅い家でも、地盤沈下が進めば古い家以上に倒壊リスクを抱える状態になりかねません。

建物が傾けば屋根や外壁の継ぎ目に隙間ができ、雨水が侵入する経路が生まれるため、雨漏りやシロアリ被害も発生しやすくなってしまいます。

健康への悪影響が生じる

家の傾きがあることで住む人の健康に影響を及ぼします。

例えば、平衡感覚を保つために体が無意識に補正を続けるため、慢性的な疲労が蓄積します。

具体的な症状として、めまい、頭痛、吐き気、肩こり、不眠、食欲不振などが報告されています。

家の傾きの基準として広く知られているのが、国土交通省「住宅紛争処理の参考となるべき技術的基準」です。

健康被害との直接的な関係を定めた基準ではありませんが、6/1000を超える傾きの家ではめまいや頭痛などの症状が出やすいと住宅修復業者の事例から指摘されています。

資産価値が下がる

地盤沈下は、家の資産価値を下げる要因になります。

買主の立場で考えれば、傾いた家の購入には修復費用というリスクが伴うため、市場価格より低い金額でなければ売れにくくなるでしょう。

建物だけでなく土地の評価まで影響を受けることも多く、修復費用相当額が査定額から差し引かれる形で値下げされる傾向があります。

地盤沈下や建物の傾きは告知義務のある重要事項に該当し、売却時に隠して引き渡すと契約不適合責任を問われて損害賠償や契約解除を求められるリスクがあります。

修復しないまま放置すれば資産価値は下がり続け、将来の売却時の選択肢が狭まります。

地盤沈下した家を修復する工法

地盤沈下した家の修復には複数の工法があります。

地盤の状態や建物の構造、傾きの程度によって適した方法が異なります。

ここでは、代表的な4つの工法を解説していきます。

土台上げ工法

土台上げ工法は、家の基礎と土台を切り離し、土台から上の建物部分だけをジャッキアップして水平に戻す工法です。

プッシュアップ工法やあげ舞い工法とも呼ばれます。

費用相場は100万円から400万円で、工期は2〜3週間程度が目安です。

基礎の傾きはそのままにして、建物部分だけを持ち上げるため、他の工法と比べてコストが抑えられる点がメリットです。

注意点としては、基礎の歪みが残ること、地盤そのものは改良されないため再沈下の可能性があることが挙げられます。

地盤の沈下が既に終息していて、土台に強度がある10cm程度までの傾きが対象です。

応急処置的な工法という位置づけになり、軟弱地盤が継続している場合には適しません。

耐圧盤工法

耐圧盤工法は、基礎の下を掘削して耐圧盤と呼ばれる鉄板やコンクリート板を設置し、その上に油圧ジャッキを設けて家を持ち上げる工法です。

費用相場は200万円から700万円で、工期は2〜3週間が目安となります。

土台上げ工法と異なり、基礎ごと家を持ち上げるため建物の歪みを根本的に修正できる点がメリットです。

騒音や振動が少なく、ミリ単位での調整が可能なので傾斜が大きい建物にも対応できます。

ただし、地盤が安定していて再沈下の可能性が低いことが適用の条件になります。

地盤の沈下が継続している軟弱地盤では、別の工法を選ぶ必要があります。

薬液注入工法

薬液注入工法は、建物の周囲や内部から軟弱地盤に注入管を挿入し、土を固結させる薬液を注入して地盤改良と建物の修正を同時に行う工法です。

費用相場は250万円から400万円で、工期は1〜2週間程度です。

地盤そのものを硬く作り変えながら家を持ち上げるため、再沈下のリスクが少ない点がメリットとして挙げられます。

また、地震時の液状化リスクも軽減できます。

家の中を掘削する必要がなく、工事中も生活を続けられるケースが多いため、住みながらの修復に向いています。

特に業者の技術力に左右されやすい工法です。

アンダーピニング工法

アンダーピニング工法は、基礎の下を掘削し、ジャッキの圧力と家の重みで地盤の支持層まで鋼管杭を打ち込み、建物を支えながら傾きを修正する工法です。

費用相場は300万円から1,000万円と高額になりやすく、工期も他の工法より長めになります。

支持層という頑丈な地層まで杭を到達させるため、再沈下の可能性が極めて低く、耐震性も向上します。

傾きが大きい建物や、地盤の沈下が継続している場合に有効な選択肢です。

費用は最も高くなりますが、抜本的な解決を求める場合や、軟弱地盤が深い場所にも建物の安定を確保できる点で他の工法に勝ります。

修復のための費用負担を軽減する方法

地盤沈下の修復費用は数百万円から1,000万円規模に及ぶため、自費だけで対応するのは大きな負担になるでしょう。

条件によっては以下のような制度を活用できる可能性があります。

住宅瑕疵担保責任

新築から10年以内の住宅であれば、住宅の品質確保の促進等に関する法律(住宅品確法)に基づく瑕疵担保責任を施工業者に問える可能性があります。

住宅品確法では、構造耐力上主要な部分や雨水の浸入を防止する部分について、引き渡しから10年間の瑕疵担保責任が義務付けられており、基礎や地盤の問題はこの構造耐力上主要な部分に含まれます。

新築時の地盤改良に問題があった場合や、必要な地盤調査が不十分だった場合は、施工業者の負担で補修を求められる可能性があります。

施工業者が倒産していて補修対応が受けられない場合でも、新築住宅には住宅瑕疵担保責任保険の加入が義務付けられているため、保険金で補修費用が支払われます。

築10年以内の住宅で地盤沈下が起きた場合は、購入時の契約書類と保険関連書類を確認し、施工業者または保険法人に問い合わせることから始めます。

地震保険

地震や液状化が原因で地盤沈下が起きた場合、地震保険の補償対象になる可能性があります。

地震保険では、建物の沈下・傾斜の程度や主要構造部の損害状況に応じて、全損・大半損・小半損・一部損の4区分で保険金が支払われる仕組みです。

液状化による被害については、傾斜の角度または沈下の深さで認定基準が定められています。

地震保険は単独では加入できず、火災保険に付帯する形で契約する必要があります。

圧密沈下のように自然災害に該当しない地盤沈下は、補償対象外になる点に注意してください。

地震や液状化が原因と判断できる場合は、加入している保険会社に連絡し、被害認定の調査を受けることで補償の可否が判明します。

保険金は用途を限定されないため、修復費用の一部に充てつつ、残りを生活資金にすることも可能です。

自治体の補助金制度

大規模災害が発生した地域では、自治体が傾き修復の補助金制度を設けるケースがあります。

過去には東日本大震災後の液状化被害が出た地域や、熊本地震の被災地などで、修復工事費用の一部を自治体が補助する制度が運用されてきました。

補助金の有無や金額、申請条件は自治体によって異なります。

被災地でなくても、軟弱地盤対策として独自の補助制度を設けている自治体もあるため、お住まいの市区町村の建築指導課や住宅相談窓口に確認してみましょう。

補助金の申請には所定の書類や工事業者の見積もりが必要となり、申請から交付までに時間がかかる場合もあるため、修復工事を始める前の早い段階での確認が重要です。

地盤沈下の修復が困難な場合

予算面の制約や地盤沈下の継続など、状況によって修復が現実的でないこともあるかもしれません。

そんなときに取れる対応を見ていきましょう。

買取業者に売却する

地盤沈下した家は通常の不動産流通では買い手が見つかりにくいですが、買取業者であれば現状のまま買い取ってもらえる可能性があります。

買取業者は再販を前提に、地盤改良や修復を含めた事業計画で物件を評価するため、一般の買主とは異なる判断基準で買い取ってくれます。

買取価格は市場相場より低くなる傾向がありますが、修復費用を負担せずに早期に手放せる点がメリットです。

複数の買取業者から見積もりを取り、価格と契約条件を比較することで、納得できる条件での売却を目指せます。

訳あり物件を専門に扱う業者であれば、地盤沈下のような事情を理解した上での提案を受けやすくなります。

解体して土地として売却する

建物を解体して更地にしてから売却する方法もあります。

傾いた家がついたままでは買主の心理的なハードルが高くなりますが、更地であれば新築用地として通常の不動産市場で売却できる可能性が広がります。

ただし解体後も地盤の問題は残るため、買主が新築する際に地盤改良費用が必要になる点を価格設定で考慮する必要があります。

土地の立地条件が良ければ、解体費用を差し引いても十分な売却益を得られる可能性もあるため、近隣の土地相場を確認した上で判断してみましょう。

まとめ

地盤沈下の家には、扉や窓の不調、床の傾き、壁や基礎のひび割れ、地面と建物の隙間といった共通の症状が現れます。

原因は軟弱地盤・地下水の汲み上げ・地震や液状化・盛土と切土の境界などさまざまです。

修復には100万円〜1,000万円規模の費用がかかりますが、住宅瑕疵担保責任・地震保険・自治体補助金で負担を軽減できる可能性があります。

修復が現実的でない場合は、訳あり物件専門の買取業者への売却や、解体して土地として売却することを考えてみましょう。

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