使わなくなった実家や空き家を手放す方法として、「空き家バンク」を耳にしたことはないでしょうか。
自治体が運営し、無料で利用できることから、空き家の活用先として関心を集めています。
一方で、登録すればすぐに買い手が見つかるのか、どんな物件が向いているのかなど、利用する前に知っておきたい点もあります。
本記事では、空き家バンクの仕組みとメリット・デメリット、売れない場合の対処法までわかりやすく解説します。
空き家バンクとは
空き家バンクとは、地方公共団体が主体となって運営する、空き家のマッチングシステムです。
空き家を売りたい・貸したい所有者と、買いたい・借りたい利用希望者をつなぐ仕組みで、登録も閲覧も無料で利用できます。
近年は自治体だけでなく、NPOや民間事業者が運営に加わるケースも増えています。
空き家バンクが広がった背景には、空き家の急増があります。
平成27年(2015年)に「空家等対策の推進に関する特別措置法」が施行されたことを契機に、空き家対策の一環として各自治体への普及が進みました。
少子高齢化や過疎化で地方を中心に空き家が増えるなか、自治体が主体となって空き家の流通を促す制度として位置づけられています。
注意したいのは、自治体が担う範囲には限界があるという点です。
不動産の売買や賃貸の媒介には宅地建物取引業の資格が必要なため、公務員である自治体職員が契約交渉や契約書の作成を直接行うことはできません。
自治体が行うのは物件情報の収集と公開、利用希望者への紹介までで実際の契約は当事者どうしの直接交渉か、自治体が提携する不動産会社の仲介で進めるのが一般的です。
後者では仲介手数料が発生します。
民間の不動産会社との違いも理解しておく必要があります。
不動産会社は営利目的で、契約成立に向けて積極的に広告活動を行いますが、空き家バンクは営利を目的としないため、自治体は物件の紹介までにとどまり、広告や契約のサポートには踏み込みません。
その代わり、資産価値が低く民間では扱われにくい物件も登録できる点が特徴で空き家バンク経由で契約が成立した場合に、自治体から補助金や助成金を受けられるケースもあります。
物件を探す入口としては、各自治体のサイトのほかに「全国版空き家・空き地バンク」があります。
国土交通省が構築し、公募で選ばれた2事業者(株式会社LIFULL・アットホーム株式会社)が、平成30年(2018年)4月から運用しています。
自治体ごとにばらばらだった物件情報を横断して検索できるため、地域を越えて空き家を探す際の起点になっています。
登録から成約までの流れ
空き家バンクの利用は、大きく「物件の登録・掲載」「問い合わせと交渉」「契約」の3段階で進みます。
物件を登録・掲載する
所有者は、物件が所在する市区町村の空き家担当窓口に登録を申し込みます。
申請書や納税証明書などの必要書類を提出し、自治体が物件を確認して問題がないと判断すると自治体のWebサイトや広報誌に物件情報が掲載されます。
問い合わせ
掲載後、購入や賃借を希望する利用者が物件情報を閲覧し、条件に合う物件があれば、自治体の窓口や提携する不動産会社を通じて問い合わせます。
現地見学や価格交渉を経て、双方が合意に至れば契約へと進みます。
契約を結ぶ
双方が合意したら、売買・賃貸契約を締結します。
ただし、登録から成約まで数か月以上かかるケースが一般的で、即時の売却には向いていません。
急いで現金化したい場合は、別の方法を検討する必要があります。
空き家バンクのメリット
空き家バンクのメリットについて見ていきましょう。
登録・掲載が無料
空き家バンクへの登録や閲覧などは無料で行えます。
一般的な不動産売却では仲介会社への依頼時に広告費用が生じることも想定されますが、空き家バンクでは登録や掲載段階で費用は一切かかりません。
ただし成約の際に自治体提携の不動産会社が仲介に入った場合は、仲介手数料が発生します。
無料というのは登録や掲載段階に限った話であり、売買や賃貸契約の成立に不動産会社が関与すれば通常の取引と同じコスト構造になる点は理解しておく必要があります。
移住希望者へのリーチ
空き家バンクには物件を手放したい人や賃貸に出したい人が所有している空き家情報が掲載されており、田舎暮らしや地方移住を希望する人がアクセスしてきます。
一般的な不動産ポータルサイトや地元の不動産会社の顧客リストでは出会いにくい移住志向の層に、物件情報を届けられる点が独自のメリットです。
補助金制度による成約率の向上
近年は空き家バンクの普及により、住宅を移住者向けに活用する動きが広がり、購入補助や空き家改修補助など物件取得からリフォームまでを支援する制度が全国に増えました。
空き家バンクへの掲載と自治体の補助制度が組み合わさることで、物件の魅力が高まり、マッチングの可能性が上がります。
空き家バンクのデメリット
空き家バンクにはデメリットも存在します。
成約率の低さ
空き家バンクは、登録すれば売れるという仕組みではありません。
国土交通省の調査では、全国版空き家バンクの成約件数は約6,000件(令和2年10月末時点)にとどまります。
登録から成約まで数か月以上かかることは珍しくなく、1年以上問い合わせがないという声も聞かれます。
急いで処分したい場合や、維持コストを早く止めたい場合に、空き家バンク単独で解決するのは現実的ではありません。
積極的なマーケティングは行われない
空き家バンクは自治体による非営利の運営のため、買い手を能動的に探す営業活動は基本的に行われません。
役割の中心は物件情報の掲載と問い合わせ対応であり、買い手が現れるのを待つ仕組みです。
不動産会社であれば、不動産流通機構(レインズ)への登録、チラシや広告での告知、顧客への直接案内など、複数のチャネルで買い手を探します。
空き家バンクに同様の活動は期待できないため、問い合わせが来るかどうかは、物件の条件や掲載写真の質、価格設定に大きく左右されます。
不動産会社との並行利用ができないことがある
空き家バンクへの登録中は、不動産会社と媒介契約を結べない自治体があります。
空き家バンクで買い手を待ちながら、不動産会社にも広告活動を依頼する、という併用ができないため、どちらの方法が自分の希望に合うかを慎重に判断する必要があります。
なお、不動産会社との媒介契約を解除した後であれば、空き家バンクを利用できます。
ルールは自治体によって異なるため、登録を申し込む前に担当窓口へ確認しておくと確実です。
空き家バンクで売れない場合どうする?
空き家バンクへの登録で成果が出ない場合、次の手を考える必要があります。
物件の状況や急ぎ度に応じた適切な方法を選ぶことが、空き家問題の解決を早めます。
不動産会社へ仲介を依頼する
立地や建物の状態が比較的よく、急いで売る必要がなければ、不動産会社への仲介依頼をします。
空き家バンクが情報を掲載して問い合わせを待つ仕組みなのに対し、不動産会社はレインズへの登録やチラシ・ネット広告、顧客への直接案内など複数のチャネルで能動的に買い手を探します。
依頼先は一社に絞らず、複数社へ査定を依頼し、提示価格だけでなく物件への理解度や売却プランを見比べることが大切です。
地域に強く取引実績が豊富な会社を選べるかどうかが結果を左右します。
ただし、仲介はあくまで買い手が現れて初めて成立するため、需要の乏しい物件では空き家バンクと同様に時間がかかる点は理解しておく必要があります。
賃貸として活用する
すぐに売れないなら、売却にこだわらず「貸す」ことで活用する道もあります。
借り手がつけば、賃料で固定資産税や維持費を賄え、保有しながら収益を生み出せます。
将来的に売却や自己利用へ切り替える余地を残せる点も優れています。
近年は、古民家やDIY可物件を移住者に貸す例も増えています。
一方、賃貸に出す前に最低限の修繕やクリーニングが必要になることが多く、その費用負担は見込んでおく必要があります。
借り手とのトラブルや退去後の原状回復など、貸主としての管理責任が生じる点も押さえておきましょう。
解体して更地で売る
建物が老朽化して活用の見込みが立たない場合は、解体して更地にしてから売る方法があります。
更地にすると買い手の選択肢が広がり、新築を希望する買い手にも対応しやすくなります。
古い建物が残っているために敬遠されていた土地でも、更地にすることで動き出すことがあります。
ただし、解体には費用がかかるほか、更地にすると住宅用地特例が外れて土地の固定資産税が上がるため、解体のタイミングに注意が必要です。
更地にして本当に売れる見込みがあるかを、地元の不動産会社に事前に確認した上で判断するのが安全です。
解体業者は、複数社から見積もりを取って比較しましょう。
相続土地国庫帰属制度を利用する
相続した土地であれば、相続土地国庫帰属制度を使い、一定の要件と負担金のもとで国に引き取ってもらう方法もあります。
売却先がどうしても見つからない土地を、手放して管理義務から解放されるための制度です。
対象は土地のみで、建物が残っている場合は解体して更地にすることが申請の前提です。
また、境界が不明確な土地や担保権が設定された土地などは引き取りの対象外となるほか、引き取り後の管理費相当として負担金の納付が必要です。
要件が細かいため、利用を検討する場合は法務局へ相談するとよいでしょう。
訳あり物件専門の買取業者に売却する
空き家バンクでも仲介でも買い手がつかない物件は、一般の流通に乗りにくい条件を抱えていることが多く、同じ方法で売り直しても結果が変わりにくいのが実情です。
老朽化が進んでいる、遠方で管理が難しい、再建築不可の土地に建っているといった物件は、訳あり物件を専門に扱う買取業者へ依頼しましょう。
買取は仲介より価格が低くなる傾向がありますが、買い手を探す必要がないため最短数週間で現金化でき、リフォームも不要で現況のまま引き渡せます。
維持費・固定資産税・管理の手間からも早期に解放されるため、長く売れ残った物件ほど、総合的なコストでは買取が割安になることもあります。
空き家バンクや仲介で解決の目処が立たない物件にとって、最も確実に手放せる選択肢です。
まとめ
空き家バンクは、登録・掲載が無料で、移住希望者という独自の層に物件を届けられる点が強みです。
一方で、自治体が能動的に集客を行わない仕組みのため、登録すればすぐ売れるわけではなく、売却が長期化しやすい点は理解しておく必要があります。
空き家バンクだけに頼らず、物件の状態や急ぎ度に応じて、不動産会社への仲介依頼や買取業者への相談も視野に入れることが、空き家を早期に手放すための現実的なアプローチです。
空き家の処分でお困りでしたら、訳あり物件買取専門のINTERIQへご相談ください



