不動産物件の購入を検討する際、ランニングコストである「固定資産税」がいくらになるのかは多くの人が気になるポイントではないでしょうか。
再建築不可物件は固定資産税の面で一般的な物件よりも評価が低くなるという特徴がありますが、なぜ評価にそこまでの差が生まれるのでしょうか?
この記事では、再建築不可物件の税金が安くなる根拠や固定資産の計算方法、税負担を抑えるための秘策まで解説します。
- 再建築不可物件の固定資産税が「なぜ安いのか」という理由
- 土地・建物の評価額が決まる仕組みと計算シミュレーション
- 税負担を軽減できる可能性のある特例や優遇措置
固定資産税とは?
固定資産税とは、土地や建物(家屋)などの「固定資産」を所有している人にかかる地方税のことです。
毎年1月1日時点での所有者に対して、その物件がある市区町村(東京23区の場合は都)から課税されます。
毎年4月〜6月頃に、自治体から「納税通知書」が届きます。
年4回に分けて分割で支払うか、一括で納付するか選べます。
固定資産税の評価は、市区町村が定める「固定資産評価基準」に基づいて行われますが、土地と建物では、それぞれ評価の視点が異なります。
土地については、路線価や周辺の取引事例を参考に立地条件・形状・面積などを総合的に判断して決定される。
道路に面する土地1㎡あたりの価格を示す「路線価」が基準
固定資産税評価額は、実勢価格(時価)の7割程度を目安に設定
建物の評価は、建築年・構造・面積・設備の状況などから算出される。
同じ建物を建て直した場合の価格(再建築価格)」を基準に、築年数による劣化(経年減価)を反映させて決定。
木造住宅:築20〜25年程度で評価額は新築時の2割程度まで下がる。
鉄筋コンクリート造(RC):減価のスピードが遅く、40〜50年かけて緩やかに下がる。
土地は「立地や形状」、建物は「築年数や構造」によって評価額が決まります。
古い建物や条件の悪い土地ほど税負担が軽くなる仕組みです。
再建築不可物件の固定資産税はどう決まる?
再建築不可物件の固定資産税が安くなる理由は、建築基準法上の制限によって土地の利用価値が低いと公的に判断されるためです。
具体的にどのように税額が決まっていくのか、土地と建物それぞれの視点から解説します。
土地の固定資産税
再建築不可物件の土地にかかる固定資産税が安くなる背景には、建築基準法上の制限によって土地の資産価値が低く見積もられるという事情があります。
具体的に数字を挙げてシミュレーションしてみましょう。
例えば、通常であれば1,000万円の評価額がつく土地が、再建築不可という条件により700万円に減額評価されたとします。
固定資産税の標準税率は1.4%ですから、本来なら年間14万円の税金がかかるところ減額後は9万8,000円となり、これだけで年間約5万円の差が生じる計算になります。
しかし、この減額評価はすべての物件で約束されているわけではありません。
自治体の評価方針によっては建築制限が反映されず、通常の土地と同等の評価額で課税されるケースもあります。
とりわけ都心部の駅周辺や商業施設に近い利便性の高いエリアでは、たとえ建物が建てられなくとも駐車場や資材置き場としての底堅い需要が見込めるため、評価額が高い水準で維持される傾向にあります。
税額をさらに引き下げる要素として「住宅用地の特例」があります。
これは再建築不可物件であっても適用される制度で、200平方メートル以下の小規模住宅用地であれば評価額が6分の1に、それを超える一般住宅用地の部分についても3分の1に軽減されます。
先ほどの評価額700万円(100平方メートル)の土地でこの特例を適用して計算し直すと課税標準額はさらに低い約117万円まで圧縮され、最終的な税額は約1万6,000円にまで抑えられることになります。
このように再建築不可物件の固定資産税は、土地評価額そのものの減額と住宅用地の特例という二段階の仕組みによって劇的に安くなる構造を持っているのです。
建物の固定資産税
建物の固定資産税についてですが、土地とは異なり「再建築不可かどうか」という法的制限が直接評価額に影響することはありません。
あくまで建物の構造や築年数といった建物の状態のみに基づいて税額が算出されます。
一般的に再建築不可物件は、建築から長い年月が経過しているケースが大半です。
例えば、築40年を超えるような木造住宅であれば、建物の評価額は経年劣化によって新築時の約2割程度(評価の下限)まで下がっているため、実際の固定資産税額も年間数千円から1万円程度に収まることが一般的です。
一方、比較的新しい建物が残っている場合には、通常の物件と同様の課税がなされます。
仮に新築時の評価額が800万円の木造住宅で築10年が経過している場合、評価額は約500万円程度(新築時の6〜7割)残存しているとみなされ、年間約7万円の税額が発生する計算になります。
つまり、再建築不可物件の建物部分の税金が安くなる傾向にあるのは、再建築不可という「制限」による減額措置ではなく、単に「建物が古いから」という物理的な理由に過ぎません。
したがって、もし同じ築年数・同じ構造の建物であれば再建築ができる土地であってもできない土地であっても、建物にかかる固定資産税額は全く同じになるのです。
固定資産税の計算方法
固定資産税の計算方法について見ていきましょう。
課税標準額の確認
固定資産税の具体的な金額を計算するためには、計算の基礎となる「課税標準額」を把握することから始めなければなりません。
課税標準額とは、自治体が算定した物件の価値(固定資産税評価額)をもとに決定される数字のことですが、ここには住宅用地の特例などが反映されるため、元の評価額とは異なる数字になっていることが一般的です。
すでに当該物件を所有している場合は、毎年4月から6月頃に自治体から届く「固定資産税納税通知書」を確認するのが最も確実です。
通知書の明細欄には、土地と建物それぞれの「評価額」と、実際に税率を掛ける対象となる「課税標準額」が併記されています。
一方、これから物件の購入を検討している段階であれば、売主に依頼して納税通知書のコピーを見せてもらうのが一番早いでしょう。
役所で固定資産評価証明書を取得しようとしても、原則として所有者本人や委任を受けた人でなければ発行されないというハードルがあります。
なお、手元に資料がない段階でおよその税額を知りたい場合には、周辺の公示価格から逆算して推定する方法もあります。
税額の計算式
固定資産税の額は、自治体が決定した「評価額」をベースに、以下の数式で計算されます。
固定資産税額=課税標準額×税率(標準1.4%)
固定資産税の計算式は、課税標準額に税率をかけるというシンプルなものです。
標準税率は1.4%ですが、市町村によっては独自に税率を設定している場合もあります。
課税標準額が100万円であれば、100万円×1.4%で年間1万4,000円の固定資産税となります。
再建築不可の土地で評価額が800万円、建物の評価額が50万円(築40年の木造住宅)のケースで考えてみましょう。
土地については住宅用地の特例が適用され、面積が150平方メートルだとすると小規模住宅用地として評価額の6分の1が課税標準額になります。
800万円÷6で約133万円が土地の課税標準額です。
建物は評価額がそのまま課税標準額となるため50万円です。
合計183万円に税率1.4%をかけると、年間の固定資産税は約2万5,600円となります。
都市計画税が課される地域では、固定資産税に加えて納める必要があります。
都市計画税の税率は0.3%が上限で、多くの市町村がこの税率を採用しています。
先ほどの例で都市計画税を計算すると183万円×0.3%で約5,500円となり、固定資産税と合わせて年間約3万1,000円の税負担となります。
都市計画税も住宅用地の特例が適用されるため、課税標準額は固定資産税と同じ金額で計算されます。
固定資産税を軽減する方法
再建築不可物件であっても、一定の条件を満たせば固定資産税を軽減できる制度があります。
住宅用地の特例
住宅用地の特例は、土地の上に住宅が建っている場合に適用される強力な軽減措置です。
小規模住宅用地については課税標準額が6分の1に、一般住宅用地については3分の1に減額されます。
この特例は、再建築不可物件にも適用されるため必ず活用すべきです。
適用するためには、土地の上に住宅として使われている建物が存在している必要があります。
建物が老朽化して倒壊寸前であっても、住宅としての形態を保っており、実際に人が住んでいる、あるいは住むことができる状態であれば特例は継続されます。
ただし、建物を取り壊して更地にしてしまうと特例は受けられなくなり、固定資産税が一気に6倍になってしまいます。
再建築不可物件を購入して建物を取り壊そうと考えている場合は、この点に注意してください。
所有者は、古い建物を維持管理するためのコストと特例を失って更地になった場合の税負担の増加額を天秤にかけ、どちらが経済的に有利かを見極める必要があります。
安易に解体してしまうと資産価値だけでなく税制面でも損失を招く可能性があることを認識しておくべきです。
耐震改修による減額措置
建物の固定資産税を抑えるもう一つの手段として、耐震改修工事を行った場合に適用される減額措置があります。
再建築不可物件は「建て替え」こそできませんが、既存の建物を「改修」して住み続けることは認められています。
そのため、建物の安全性を高めつつ税制上のメリットも享受できるこの制度は、古い物件の所有者にとって非常に相性の良い選択肢と言えます。
具体的には、昭和57年1月1日以前に建築された古い住宅に対して、現行の耐震基準に適合させるための改修工事を行い、その費用が1戸あたり50万円を超えた場合が対象です。
この条件を満たすと工事が完了した翌年度分の建物にかかる固定資産税が2分の1に減額されます。
基本的には1年限りの措置ですが、もし認定長期優良住宅に該当するような質の高い改修を行った場合には、適用期間が2年間に延長されるという優遇もあります。
ただし、この減額を受けるためには、改修工事が完了してから3ヶ月以内という短い期間内に市町村へ申告しなければなりません。
その際、建築士などの専門家が発行した工事内容が耐震基準に適合していることの証明書が必要となるため、工事を依頼する段階で施工業者や建築士と連携を取っておくことが重要です。
また、多くの自治体では税金の減額とは別に耐震改修工事そのものに対する補助金制度を設けています。
補助金で工事費の負担を減らし、完了後は減税措置を受けるという「ダブル活用」ができれば、出費を大幅に抑えられるでしょう。
まとめ
再建築不可物件の固定資産税は、一般的な物件に比べて安くなる傾向にあります。
土地については評価額が減額される可能性がありますが、建物については一般的な物件と変わりません。
納税通知書で課税標準額を確認し、税率をかけて計算すると固定資産税がわかります。
住宅用地の特例など強力な軽減措置があるため、建物を取り壊さずに維持することで税負担を低く抑えられます。
耐震改修を行えばさらに減額を受けられる可能性もあるため、古い建物を所有している場合は活用できないか調べてみましょう。



