「特定空き家」という言葉を耳にしたことはないでしょうか。
空き家を所有している方にとっては、無関係ではいられない制度です。
認定されれば固定資産税の負担が大きく増え、最終的には行政代執行で建物を解体される可能性まであります。
この記事では、特定空き家の定義、認定基準、所有者が受ける不利益、回避策を解説します。
- 特定空き家の定義
- 管理不全空き家との違い
- 特定空き家に認定される判断基準
- 認定された場合に所有者が受ける経済的・法的な不利益
- 特定空き家への認定を避けるための具体的な対応
特定空き家とは

特定空き家は、2015年5月に全面施行された空家等対策の推進に関する特別措置法(空家等対策特別措置法)に基づいて自治体が認定する空き家の区分です。
認定の対象は以下です。
- 倒壊などのおそれがあり保安上危険なもの
- 衛生上有害なもの
- 著しく景観を損なっているもの
- 周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切なもの
特定空き家に認定された空き家の所有者は、自治体から段階的な対応を求められる立場になります。
認定されたときに罰金などの直接的なペナルティはありませんが、改善を求める勧告を受けると、土地に対する固定資産税の優遇措置が適用されなくなります。
そして、修繕などの命令に従わない場合は、50万円以下の過料が科されます。
所有者が認識しないまま放置していた空き家が、ある日突然この区分に該当する可能性もあるため、注意が必要です。
なお、国や地方自治体が所有・管理する建物は除外されており、あくまで民間が所有する空き家が認定対象です。
管理不全空き家との違い
2023年12月に施行された改正法によって、特定空き家の前段階にあたる「管理不全空き家」という区分が新設されました。
管理不全空き家は、現時点では特定空き家の状態に至っていないものの、放置を続けると特定空き家になるおそれがあると判断された空き家のことです。
例えば、屋根や外壁の一部が傷み始めている、庭木が伸び放題になっている、敷地内にゴミが目立ち始めているといった、初期段階の劣化が見られる空き家が該当します。
両者の違いは、空き家の劣化度合いと自治体の介入レベルです。
特定空き家は既に倒壊や衛生上の問題が発生しているレベルの空き家を対象とするのに対し、管理不全空き家はそうした問題が起きる前に介入するための区分です。
改正前は特定空き家として認定されない限り自治体は本格的な対応を取れず、状態が深刻化してからの対処になりがちでしたが、改正後は予防的な段階から自治体が指導や勧告を行えるようになり、所有者への働きかけが早期化されています。
管理不全空き家の勧告を受けると固定資産税の住宅用地特例が解除されます。
住宅が建つ土地の固定資産税を最大1/6に軽減する制度。
空き家を所有している方は、特定空き家になってから対応するのでは遅く、管理不全空き家の段階で警鐘を受け止めて行動する必要があります。
特定空き家に認定される判断基準

特定空き家への認定はどのように行われるのでしょうか。
所有者として知っておくべき4つの判断基準をお伝えします。
倒壊など保安上危険な状態
最初の判断基準は、建物や付随する構造物の保安上の危険性です。
ガイドラインでは「建築物が倒壊等するおそれ」「屋根、外壁等が脱落、飛散等するおそれ」「擁壁が老朽化し危険となるおそれ」の3つの観点から判断します。
建築物の倒壊リスクについては、基礎の沈下、柱や梁の腐朽、屋根の変形、外壁の剥離といった状態が進行している空き家が対象です。
劣化が進んだ建物は、台風や地震をきっかけに倒壊するリスクが高まります。
倒壊が起きれば、隣接する住宅や通行人に被害を及ぼす可能性があるため、自治体は周辺への悪影響の範囲も含めて重点的にチェックしています。
屋根や外壁の脱落・飛散も独立した観点として評価されます。
屋根材や外装材が剥がれて落下すれば、通行人や近隣に被害をもたらすため、剥落の有無や程度が判定対象となります。
高台や斜面に立つ住宅では、擁壁の老朽化も判断材料に加わります。
コンクリートのひび割れ、変形、倒壊のおそれがある擁壁は、土砂崩れや崩落につながる危険があるため、建物本体と並ぶ評価項目となっています。
また、雪が多い地域では、屋根に積もった雪の重みで建物が傾いたり、構造材に歪みが生じたりするケースも、倒壊のおそれとして認定理由になります。
なお、頻繁な落雪の形跡は別の判断基準である「生活環境の保全に不適切な状態」にも該当し得るため、雪害は複数の観点から評価されることがあります。
築年数自体は直接の判定基準ではありませんが、年数が古い木造住宅ではシロアリ被害や雨漏りによる構造材の劣化が進んでいることが多く、結果として認定対象となるケースは少なくありません。
衛生上有害な状態
2つ目の判断基準は、空き家が衛生面で周辺に悪影響を及ぼしているかどうかです。
ガイドラインでは、建築物又は設備等の破損等が原因の場合と、ごみ等の放置・不法投棄が原因の場合の2つに分けて判断されます。
建築物又は設備等の破損等が原因のケース
該当する代表例として、吹付け石綿等が飛散し暴露する可能性が高い状況、浄化槽等の放置・破損による汚物の流出や臭気の発生、排水等の流出による臭気の発生が挙げられます。
臭気に関する項目は、いずれも地域住民の日常生活に支障を及ぼしている状態であることが判断の要件です。
ごみ等の放置や不法投棄が原因のケース
敷地内や建物内に廃棄物が長期間放置されることで、臭気の発生源となったり、周辺の衛生環境に影響を与えたりしている状態が判断対象となります。
なお、認定は建物や敷地の状態に基づくものであり、所有者の居住地や訪問頻度自体は判定基準ではありません。
ただし、管理が行き届きにくい状況では汚物の流出やゴミの蓄積が見過ごされやすくなるため、結果として衛生面の問題が顕在化しやすい傾向はあります。
著しく景観を損なっている状態
3つ目の判断基準は、空き家が地域の景観に悪影響を与えているかどうかです。
判断は、景観法上の制度への適合状況と、外観の傷み・汚れの状態の2つの観点から行われます。
景観法上の制度や地域ルールへの不適合
景観法に基づき景観計画を策定している地域や、景観地区を定めている地域において、計画や条例で定められた建築物又は工作物の形態意匠等の制限に著しく適合しない状態が判断対象となります。
地域で定められた景観保全に係るルールに著しく適合しない状態も該当します。
観光地や歴史的な街並みを保存している地域では、景観計画や景観地区が定められているケースが多く、一般地域より厳しい基準が適用されることがあります。
外観の傷みや汚れ
屋根や外壁等が、汚物や落書き等で外見上大きく傷んだり汚れたまま放置されている状態が判断対象となります。
外壁の塗装剥がれや、壁面への大量の落書きが該当します。
また、多数の窓ガラスが割れたまま放置されている状態も独立した判断項目です。
1〜2枚の破損ではなく、複数箇所での放置が要件となります。
なお、「人が住んでいないだけで建物自体は問題ない」と所有者が考えていても、外観の劣化が顕著であれば、景観の観点から認定対象になる場合があります。
周辺の生活環境を乱している状態
4つ目の判断基準は、空き家が周辺住民の日常生活に支障を及ぼしているかどうかです。
立木に起因するもの、空き家に住みついた動物等に起因するもの、不特定の者の侵入等に起因するもの、の3つの観点から判断が行われます。
立木に起因するもの
立木の腐朽、倒壊、枝折れ等が生じ、近隣の道路や家屋の敷地等に枝等が大量に散らばっている状態が判断対象となります。
立木の枝等が近隣の道路等にはみ出し、歩行者等の通行を妨げている状態も該当します。
住みついた動物等に起因するもの
空き家に動物が住みつき、鳴き声や物音が頻繁に発生して周辺住民の生活を妨げている状態が該当します。
例えば、野良猫が住みついて繁殖し、糞尿による臭気が広がっているケースなどです。
害虫の発生も判断要素です。
シロアリが大量発生して近隣の家屋に飛来している状態や、蚊、のみ、ねずみなどが多数発生して近隣に支障を及ぼしている状態が該当します。
不特定の者の侵入等に起因するもの
門扉が施錠されていない、窓ガラスが割れている等不特定の者が容易に侵入できる状態で放置されている場合が該当します。
屋根の雪止めの破損など不適切な管理により、空き家からの落雪が発生し、歩行者等の通行を妨げている状態や、周辺の道路、家屋の敷地等に土砂等が大量に流出している状態も判断対象です。
近隣住民の通報や相談を契機に自治体が調査に入るケースが多く、所有者が現状を把握する前に問題が顕在化することは少なくありません。
特定空き家に認定された場合のリスク

特定空き家への認定による代表的な3つのリスクについてです。
固定資産税が最大6倍になる
特定空き家に関連する不利益の中で、所有者が最も直接的に影響を受けるのが固定資産税の増額です。
住宅が建っている土地には住宅用地特例が適用されており、土地の固定資産税は最大で1/6、都市計画税は最大で1/3に軽減されています。
勧告を受けた特定空き家は、土地に対する住宅用地特例が解除される対象です。
特例が外れてしまうと翌年度の固定資産税が一気に増えることになります。
負担増は1年限りではなく、改善されない限り毎年続くため、累積的な金銭的損失は数十万円から百万円単位に膨らむ可能性があります。
住宅用地特例は管理不全空き家への勧告でも解除対象になっており、特定空き家になる前から税負担が増えるリスクは存在します。
50万円以下の過料が科される
命令の段階で改善に応じなかった場合、所有者には50万円以下の過料が科されます。
過料は行政罰の一種であり、命令違反という事実に対して経済的な制裁を加える制度です。
50万円という金額は、空き家1棟分の解体費用には届かないものの、家計にとっては相当な負担になります。
過料についても1回限りの処分とは限らず、命令違反の状態が続けば継続的に問題視される可能性があります。
過料を科されたのに改善しない所有者は、最終的に行政代執行へと移行する流れになります。
命令違反の事実は記録として残り、その後の行政手続きや不動産取引において不利に働いてしまうでしょう。
解体費用が所有者に請求される
行政代執行が実施された場合、解体や撤去にかかった費用はすべて所有者の負担です。
費用は実費ベースで請求されるため、自治体が見積もった金額がそのまま請求書として届きます。
解体費用は建物の構造や面積、立地条件によって変動しますが、木造住宅でも100万円から200万円以上かかることが一般的です。
支払いを拒否したり、支払う資金がなかったりする場合は、所有者の財産が差押えの対象となります。
負担できないからといって放置を続けても、最終的には強制的に費用が回収されます。

特定空き家に認定されないための対応について

特定空き家への認定は予防できます。
定期的な管理を継続する
空き家の劣化を防ぐ基本的な対応は、定期的な管理をすることです。
月に1回程度でも空き家を訪れ、通気・通水・清掃・庭木の剪定を行えば、建物の劣化速度はゆるやかになります。
窓を開けて空気を入れ替えるだけでも、湿気による木材の腐朽やカビの発生を防げます。
所有者が遠方に住んでいて自分で管理できない場合は、空き家管理サービスの利用という方法があります。
月額数千円から1万円程度で、定期的な見回り、写真報告、簡易清掃などを代行してもらえます。
管理を継続しているという実績は、自治体から問題視されることを防ぐ効果もあります。
売却して所有権を手放す
将来的に活用予定がない空き家は、売却して所有権を手放すのが合理的な選択ということもあります。
売却すれば、固定資産税や管理コストの負担から解放されるだけでなく、特定空き家への認定リスクも自分とは無関係になります。
築年数が古く建物の価値が低くても、土地に価値が残っていれば買い手が見つかる可能性があります。
まずは地域の不動産会社への相談から始めるのが基本ですが、地方の物件は通常の不動産流通に乗りにくいという問題もあるでしょう。
そんなときは、自治体が運営する空き家バンクへの登録や、訳あり物件専門の買取業者への相談といった方法も選択肢になります。
解体して更地にする
建物の老朽化が進み、修繕や売却が現実的でない場合は、解体して更地にするという判断もありです。
建物を取り除けば特定空き家の対象から外れ、近隣への危険性も解消されます。
解体後の土地は駐車場や貸地として活用したり、土地のみで売却したりできます。
留意すべき点は、更地にすると住宅用地特例が適用されなくなるため、土地の固定資産税が上がることです。
建物がある状態と比べて土地のみの固定資産税は最大6倍になり、特定空き家に勧告を受けた場合と同水準の負担になります。
それでも解体を選ぶ理由があるとすれば、倒壊や事故のリスクから完全に解放される点、土地として売却しやすくなる点、近隣トラブルの懸念が消える点が挙げられます。
まとめ
特定空き家は、空家等対策特別措置法に基づき、保安・衛生・景観・生活環境の4つの観点で問題があると判断された空き家です。
認定後に勧告を受けると住宅用地特例が外れて固定資産税が最大6倍になり、命令違反には50万円以下の過料、代執行が行われれば解体費用が請求されます。
所有する空き家がある場合は、定期的な管理の継続、売却による手放し、解体による更地化のいずれかを早めに判断することが、不利益を回避する最も確実な方法です。
特定空き家の処分でお困りでしたら、訳あり物件買取専門のINTERIQへご相談ください。



