住宅の欠陥は、暮らしの安全を左右する深刻な問題です。
基礎のひび割れや断熱材の施工不良など、目に見えない箇所で発生していることも少なくありません。
新築であっても例外ではなく、引き渡し後に欠陥が判明するケースもあります。
この記事では、代表的な欠陥住宅の事例と原因、欠陥が発覚した後に使える対処法を解説します。
- 欠陥住宅の条件
- 欠陥住宅がどのようにして起こるか
- 欠陥住宅の事例
- 欠陥住宅発覚後の対応
欠陥住宅とは
欠陥住宅とは、建物の安全性・耐久性・居住性に関わる重大な不備を抱えた住宅のことです。
基礎や土台、柱や梁といった構造の根幹部分に問題があり、本来備えているべき性能を満たしていない住宅が代表例にあたります。
ただし「欠陥住宅」は法律上の正式な用語ではありません。
トラブル対応の場面では、契約で約束した品質を満たさない状態を指す「瑕疵(かし)」、現在の民法では「契約不適合」という言葉が使われます。
(2020年4月の民法改正により、従来の「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」へ改められました。)
新築住宅では、品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)に基づき、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分について、引き渡しから10年間の保証が売主・施工業者に義務づけられています。
基礎・柱・屋根・外壁などの重大な不備が、保証の主な対象になります。
一方、建具や設備の軽微なトラブルは「欠陥」と区別されます。
ドアの建付けの悪さやクロスの小さなよれは「不具合」であり、修繕の対象にはなっても、住宅の性能を脅かす欠陥とは性質が異なります。
自分の家の問題が欠陥にあたるかどうかは、素人目には判断が難しいのが実情です。
安全性・耐久性・居住性のいずれかが損なわれているかを一つの基準としつつ、最終的には建築士など専門家の調査で見極めるのが確実です。
基礎・構造の欠陥事例
建物の基礎や構造体に関する欠陥は、住宅の安全性に直結する最も深刻なカテゴリです。
外から見えない部分で発生することが多く、引き渡し後しばらく経ってから症状が現れるケースも少なくありません。
基礎コンクリートの不良
基礎コンクリートの施工不良には、ひび割れ・強度不足・異物混入などの種類があります。
異物混入は、生コンクリートを型枠に流し込む際に木片などが入り込むことで起こります。
混入した木片は埋もれた木部が腐食することでコンクリートの強度や耐久性を損ない、基礎の寿命を縮める要因にもなります。
水セメント比が適切でない場合や、必要な養生期間を確保できなかった場合に、設計上の強度に届かないことがあります。
完成後は見た目で判別しにくく、専門機関による調査ではじめて判明するケースもあります。
ひび割れは、複数の原因で発生します。
経年劣化や地震の揺れによるものもあれば、施工時の配合ミスや養生不足によって生じるものもあります。
表面の微細なひび割れは必ずしも問題ではありませんが、基礎を貫通するようなひび割れは構造的な問題のサインである可能性があるため、専門家による判断が必要です。
鉄筋のかぶり不足・配筋不良
鉄筋コンクリートの基礎では、鉄筋を覆うコンクリートの厚み(かぶり厚さ)が重要です。
かぶり厚さが不足すると、鉄筋が錆びやすくなり、基礎の耐久性が低下します。
また、設計図どおりに鉄筋が配置されない配筋不良も、基礎の強度を損なう欠陥にあたります。
いずれも完成後は外から確認できず、施工中の検査でしか見抜けない点が問題です。
構造体への配管貫通
設備配管は、本来、構造体を避けて通すよう設計・施工されます。
しかし、構造体を切り欠いて配管してしまう事例があります。
構造体を欠損させると、設計どおりの強度が発揮できません。
この欠陥は壁の中や床下に隠れているため、居住者が自力で発見するのは困難です。
地震時の耐力低下につながるため、住宅の耐震性に直接影響を及ぼす深刻な問題です。
発見されるのはリフォームや大規模修繕で壁や床を開けたときが多く、長年気づかれないまま放置されるケースも存在します。
雨漏りの欠陥事例
雨漏りは欠陥住宅の相談の中で最も多い事例のひとつです。
屋根・外壁・窓まわり・ベランダなど複数の箇所で発生する可能性があり、発見が遅れると木部の腐食や断熱材の劣化など、二次被害へと広がっていきます。
症状が出るまでに時間がかかることが多く、居住開始から1〜3年で初めて気づくケースも珍しくありません。
経年劣化が原因の雨漏りと、施工不良が原因の雨漏りでは対応が異なるため、原因の特定が重要です。
屋根・外壁からの雨水侵入
屋根や外壁からの雨水浸入は、防水処理の施工不良が主な原因です。
屋根材の重なりが不適切であったり、防水シートの施工が雑であったりすることで雨水が建物内部に浸入します。
外壁では、サイディングの継ぎ目に充填するシーリング材の施工が不十分な場合、そこから雨水が浸入します。
品確法では、屋根や外壁などの「雨水の浸入を防止する部分」に欠陥があった場合、施工会社が引き渡しから10年間、補償しなければならないとされています。
サッシ・窓まわりの漏水
窓まわりの防水処理が不十分な場合、サッシと外壁の接合部から雨水が浸入します。
サッシ枠を固定するビスの入れ忘れや、窓の傾きが代表的な施工不良です。
これらは新築一戸建ての引き渡し前点検で発見されることもあります。
サッシまわりの漏水は、窓の内側に雨水のシミが現れることで初めて気づく場合がほとんどです。
発見が遅れると窓枠の木材が腐食し、修繕範囲が拡大します。
雨天時に窓の近くで壁紙が濡れている、または壁紙に変色がある場合は、サッシまわりの漏水を疑う必要があります。
ベランダ・バルコニーの防水層の劣化
ベランダやバルコニーの床面には防水層が施されていますが、施工不良があると雨水が下階へ浸入します。
防水層の施工が不十分であったり、排水口(ドレン)まわりの処理が雑であったりすると雨水がたまって浸入の原因になります。
屋外にあるため経年劣化も進みやすく、定期的な点検と補修が欠かせない箇所です。
断熱材の欠陥事例
断熱材の施工不良は、居住者が直接目視で確認できないため発見が非常に難しい欠陥です。
断熱材が正しく施工されていなくても建物は完成するため、引き渡し時の検査でも見逃されやすい特徴があります。
入居後に冷暖房効率の悪さや電気代の増加として、初めて問題に気づくケースが多くなっています。
断熱材の欠落・ずれ
グラスウール系の断熱材はタッカー(ホチキス状の留め具)で固定します。
しかし工期を急かされた突貫工事になると、留めるのを忘れたり、留めたつもりでも空振りになっていたりすることがあります。
固定されていない断熱材は時間が経つにつれてずれ落ち、隙間ができた箇所から熱が逃げます。
断熱材のずれは、一部の壁だけが極端に冷たくなるといった形で症状が現れます。
壁内の結露につながる可能性もあり、放置すると木部を腐食させる二次被害へと発展します。
断熱材の未施工
断熱材が本来必要な箇所に入っていない、という事例も報告されています。
たとえば3階建て住宅の最上階で断熱材が適切に施工されていないと夏場の室内温度が非常に高くなり、温室のような状態になってしまいます。
断熱材は、屋根や外壁など外気に接する部分に施工するのが原則です。
中間階の床には一般に不要ですが、リビングの上部にベランダがあるなど、床が外気に接する場合にはその部分にも断熱が必要になります。
未施工の欠陥は、主に2つの原因で発生します。
1つは、こうした設計上の条件を現場の職人が把握していないケースです。
もう1つは、工期短縮のために施工が省略されるケースです。
冷暖房費が明らかに高い場合は、断熱材の状態を確認する必要があります。
なぜ欠陥住宅が発生するのか
欠陥住宅はなぜ発生するのでしょうか。
多くの方は手抜き工事をイメージするかもしれません。
たしかにそれも原因のひとつです。
ただし、特定の悪質な業者が意図的に手を抜くケースだけで生まれるわけではありません。
欠陥が生まれる背景には、建築業界の構造的な問題があります。
多重下請構造による採算の制約
建築の現場は、元請・下請・孫請という多重下請構造で成り立っています。
下層の業者ほど受け取る金額が少なくなり、採算を合わせる余地が狭まります。
その結果、一部の現場では手抜き工事や杜撰な工事によって採算を合わせざるを得ない実態があります。
工期短縮とコスト削減のプレッシャー
工期の短縮とコスト削減が求められる現場では、本来慎重に行うべき施工が省略されやすくなります。
コンクリートの養生期間の短縮や、断熱材の固定の省略などは、こうしたプレッシャーが背景にあります。
工事監理の機能不全
工事監理とは、建築士が、工事を設計図どおりに行っているかをチェックする役割です。
本来は欠陥住宅の発生を防ぐ仕組みですが、現場によっては十分に機能していないことがあります。
チェックが甘くなると、施工段階の欠陥が見逃されたまま完成へと進んでしまいます。
これらの要因が重なり、欠陥のリスクはどの住宅にも一定程度存在します。
住宅を購入する側が建築の専門知識を持ちにくい以上、第三者によるチェックの重要性を理解しておくことが、リスクを抑えるために大切といえるでしょう。
欠陥が発覚した後の対処法
欠陥が発覚した場合、速やかに証拠を記録し、適切な手続きを踏んで権利を行使することが重要です。
感情的に対応したり、証拠を残さないまま業者と口頭だけで交渉したりすると、後の請求が困難になります。
証拠を記録する
欠陥を発見したら、まず状況を記録することが最優先です。
欠陥を見つけた状況を写真や動画で記録し、証拠として提示できるようにします。
記録後は速やかに売主や施工会社へ連絡します。
このときに注意したいのが、やり取りの履歴を残すことです。
電話よりもメールや書面で連絡することで、日時・内容・相手の回答を記録として残せます。
売主が対応を引き延ばすケースに備え、連絡の記録は後の交渉で重要な証拠になります。
対応に困る場合は、消費生活センターや弁護士への相談も選択肢に入れましょう。
契約不適合責任に基づく請求
引き渡された住宅が契約で予定された品質を備えていない場合、その状態を「契約不適合」といいます。
契約不適合があるとき、買主は売主に対して「契約不適合責任」を追及できます。
買主が取りうる手段は、次の4つです。
- 追完請求:修補・代替物の引き渡し・不足分の引き渡しを求める権利です。住宅の欠陥では、主に補修を求める形になります。
- 代金減額請求:相当の期間を定めて追完を催告し、それでも追完されない場合に、不適合の程度に応じて代金の減額を求める権利です。
- 契約解除:催告しても追完されない場合に契約を解除できます。ただし、不適合が軽微なときは解除できません。
- 損害賠償請求:欠陥によって生じた損害の賠償を求める権利です。ただし、売主に帰責事由がない場合は認められません。
追完請求・代金減額請求・解除には売主の帰責事由は不要ですが、損害賠償請求は売主に帰責性がある場合に限られます。
権利によって要件が異なる点に注意が必要です。
新築住宅の場合は、品確法により特別な保護が与えられています。
構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分の瑕疵について、引き渡しから10年間、売主が責任を負うと定められています。(品確法は条文上「瑕疵」という表現を使いますが、内容は契約不適合責任とほぼ同じです。)
この10年間は短くすることができない期間として定められています。
ただし、期間内であれば自動的に守られるわけではありません。
不適合(瑕疵)を知ったときから原則として1年以内に売主へ通知する必要があります。
欠陥に気づいたら、できるだけ早く通知と請求の手続きを進めることが重要です。
なお、契約不適合責任や品確法の適用は個別の事情によって判断が分かれます。
実際に請求を検討する際は、建築トラブルに詳しい弁護士など専門家に相談することをおすすめします。
購入前に欠陥を見抜く方法
欠陥住宅をつかまないための最も有効な手段が、ホームインスペクション(住宅診断)の活用です。
ホームインスペクションとは、建築士などの専門家が第三者の立場で住宅の状態を調査するサービスで、新築・中古を問わず依頼できます。
中古住宅の場合、2018年4月の宅建業法改正により、売買時のインスペクションに関する制度の説明が義務化されました。
これにより、仲介する不動産会社は、媒介契約時にインスペクション制度を説明し、調査業者をあっせんできるかどうかを告知する必要があります。
ただし、義務化されたのは制度を周知するための説明であって、インスペクションの実施そのものは義務ではありません。
調査を受けたい場合は、買主から実施を希望する必要があります。
新築の場合も、内覧会(引き渡し前の確認)のタイミングでホームインスペクターを帯同させると、目視では確認しにくい床下・屋根裏・外壁の状況を専門的な視点でチェックしてもらえます。
購入前の段階で疑問点があれば、遠慮なく確認を求めることも重要です。
建具の開閉・水まわりの動作・外壁のシーリング状態は自分でも確認できる箇所です。
気になる点はすべて記録し、引き渡し前に解決しておくことが、後のトラブル防止につながります。
まとめ
欠陥住宅の事例は、基礎・構造・雨漏り・断熱材など建物の各部位に広く存在します。
いずれも外から見えにくい箇所で発生するため、専門知識のない居住者が自力で発見することは容易ではありません。
欠陥が発覚した場合は、まず写真や書面で証拠を記録します。
そのうえで売主に連絡し、契約不適合責任や品確法に基づく権利を行使することが重要です。
新築住宅であれば、引き渡しから10年間、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分について保護を受けられます。
購入前の段階では、ホームインスペクションの活用が有効です。
第三者の専門家に住宅の状態を確認してもらうことが、欠陥住宅をつかまないための最も有効な予防策のひとつになります。
最終的に欠陥が見つかった住宅を売却したいと思うこともあるでしょう。
ただ、欠陥のある住宅は通常の市場では買い手がつきにくいのが実情です。
そうした住宅の売却でお悩みなら、訳あり物件の買取を専門とする私たちINTERIQにお任せください。
欠陥や不具合を抱えた住宅も、状態に応じて買い取ります。
まずはお気軽にご相談ください。



