「事故物件を売却したいが、どう進めればいいのかわからない」
事故物件の売却は、通常の不動産取引とは異なる手順が求められます。
告知義務の範囲を正しく理解しないまま売却を進めると、後から契約解除や損害賠償を請求されるリスクもあります。
本記事では、事故物件を売却するときに役立つ知識を解説します。
事故物件の売却を検討している方は、ぜひ最後までお読みください。
- 事故物件の定義
- 売却時に課せられる告知義務
- 事故物件の売却相場
- 事故物件を少しでも高く売るためのコツ
事故物件の定義
事故物件とは、過去に人の死に関わる事案が発生し、買主や借主の購入・入居判断に心理的な影響(心理的瑕疵)を与える可能性がある物件を指します。
ただし、すべての死亡事案が事故物件に該当するわけではありません。
国土交通省が2021年に公表したガイドラインによって、事故物件の範囲は一定の基準で整理されています。
心理的瑕疵とは
不動産における「心理的瑕疵(かし)」とは、物件の物理的な欠陥ではなく、買主や借主が心理的に強い抵抗感を抱く要因のことです。
代表的な心理的瑕疵として、まず「自殺」が挙げられます。
物件内で自ら命を絶った事案は、多くの買主にとって心理的な負担が大きく、売却価格にも大きな影響を与えます。
「殺人」は心理的瑕疵のなかで最も影響が深刻です。
事件の報道によって物件の所在地が広く知られるケースもあり、長期間にわたって資産価値の低下が続く傾向があります。
「孤独死」は、居住者が誰にも看取られずに亡くなり、発見までに時間がかかった場合に心理的瑕疵として扱われます。
「事故死」は、物件内での転倒・転落・溺死・窒息などによる不慮の死亡事案を指します。
日常生活のなかで起こりうる事故であっても、死因や状況によっては心理的瑕疵に該当する可能性があります。
国交省ガイドライン(2021年)で定められた事故物件の範囲
2021年10月、国土交通省は「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を公表しました。
不動産取引において、どのような死亡事案を告知すべきかの判断基準が初めて公的に示されたものです。
ガイドラインでは、「他殺」「自死」「火災による死亡」「原因が明らかでない死亡」について、宅地建物取引業者は買主・借主に対して告知する必要があるとされています。
一方で、老衰や持病による「自然死」や、自宅の階段からの転落・入浴中の溺死・食事中の誤嚥といった「日常生活のなかで生じた不慮の事故による死亡」については、原則として告知の対象外とされています。
ただし、ガイドラインはあくまで判断の目安であり、法的拘束力を持つものではありません。
個別の事案ごとに、買主が契約の判断に影響を受けるかどうかを考慮する必要があります。
事故物件に該当しないケース
老衰や病気による自然死は、人が生活する場所であれば当然起こりうる事象です。
自宅で療養中に持病が悪化して亡くなった場合や、高齢者が老衰で息を引き取った場合は、心理的瑕疵には当たらないと判断されます。
日常生活のなかで発生する不慮の事故死も同様です。
浴室での溺死、階段からの転落死、食事中の誤嚥による窒息死などは、住居において通常起こりうる範囲の事故と見なされ、告知義務の対象外とされています。
ただし、自然死や不慮の事故死であっても、遺体の発見が大幅に遅れ、室内に損傷や異臭が生じた場合は例外です。
特殊清掃や大規模な原状回復が行われたケースでは、事故物件として告知が必要になる可能性があります。
事故物件の告知義務
事故物件の売却で重要となるポイントが「告知義務」です。
告知義務とは、物件に関する重要な事実を買主や借主に対してあらかじめ伝える義務のことで宅地建物取引業法に基づいています。
告知義務について理解していないと、売却後に深刻なトラブルに発展するおそれがあります。
売買の場合は告知義務の期間制限がない
事故物件の売買において、告知義務には期限が設けられていません。
事故の発生から何年が経過しても、売主は買主に対して事故の事実を告知する必要があります。
賃貸の場合は「概ね3年」という目安がガイドラインで示されていますが、売買ではそのような期間の区切りが存在しません。
売買は賃貸と比べて取引金額が大きく、買主の意思決定に与える影響も大きいためです。
10年前に自殺が発生した物件であっても、売買契約の際には告知が求められます。
「時間が経ったから伝えなくてよい」という判断は、後のトラブルにつながる危険性が高いため、避けるべきです。
賃貸の場合は概ね3年が目安
賃貸取引では、国交省ガイドラインにおいて、事故発生からおおむね3年が経過すれば告知義務の対象外とされています。
賃貸は売買と異なり、入居者が一定期間で入れ替わることが前提の取引形態です。
事故発生後に別の入居者が生活した実績がある場合、心理的瑕疵の影響は薄れていくと考えられています。
ただし、3年という期間はあくまで目安であり、事件が社会的に大きな注目を集めた場合や、近隣住民の間で広く知られている場合は3年を超えても告知が必要と判断されることがあります。
告知すべき内容の範囲
告知義務を果たすにあたっては、伝えるべき内容の範囲を把握しておく必要があります。
まず、事故の種類は必ず告知すべき事項です。
自殺・殺人・孤独死・火災死亡など、どのような死亡事案が発生したのかを伝えます。
事故の発生時期も告知事項です。
いつ起きたのか具体的な年月まで伝えることが望ましいとされています。
物件内のどこで事故が発生したかも告知事項です。
共用部分で発生した場合と専有部分で発生した場合では、買主の判断に与える影響が異なるためです。
なお、亡くなった方の氏名や詳細な死亡の経緯など、遺族のプライバシーに深く関わる情報までは告知する必要はないとされています。
告知義務に違反した場合のリスク
告知義務を怠った場合、売主は法的リスクを負うことになります。
買主が事故の事実を知らずに購入した後、事実が判明した場合、契約不適合責任に基づいて契約の解除を求められる可能性があります。
契約解除に加えて、買主が被った損害(引っ越し費用、登記費用、精神的苦痛に対する慰謝料など)の賠償を請求されるケースがあります。
不動産会社が告知義務違反を行った場合は、宅地建物取引業法に基づく行政処分の対象となり、業務停止命令や免許取消しといった重い処分が科されることもあります。
事故物件の売却においては、知らなかったという言い訳は通用しません。
売主自身が事故の事実を把握している限り、誠実に告知を行うことがトラブルを防ぐ最善の方法です。
事故物件の売却相場はどのくらい下がる?
事故物件の売却価格は、通常の市場価格と比較して一定の割合で下落します。
下落の幅は、事故の種類・発見までの状況・経過年数・物件の立地条件など、さまざまな要素によって変動します。
ここでは、事故の種類ごとの一般的な相場感を紹介します。
自殺の場合
自殺が発生した物件は、通常の市場価格から約20〜30%の値下がりが見込まれます。
自殺は殺人ほどの社会的インパクトはないものの、多くの買主にとって心理的な抵抗感が強い事案です。
特に、物件内で首つりや飛び降りなどが発生した場合は、買主の忌避感がより大きくなる傾向があります。
ただし、自殺から長期間が経過している場合や、リフォームによって室内の印象が大きく変わっている場合は、下落幅が抑えられることもあります。
殺人の場合
殺人事件が発生した物件は、事故物件のなかで最も大きな価格下落が見られます。
通常の市場価格から30〜50%程度の値下がりとなるのが一般的です。
殺人事件はメディアで報道されることが多く、物件の所在地が広く知られるケースも少なくありません。
報道によって近隣住民にも事件の事実が周知されるため、地域全体のイメージに影響を及ぼすこともあります。
事件の凶悪性が高い場合や、被害者が複数にのぼる場合は、さらに大幅な値下がりとなる可能性があります。
建物を解体して更地にしても、土地の価格に影響が残るケースもあります。
孤独死
孤独死が発生した物件は、通常の市場価格から約10〜20%の値下がりにとどまることが多く、自殺や殺人と比較すると下落幅は小さい傾向にあります。
孤独死は事件性がないため、買主の心理的な抵抗感が比較的軽いことが理由です。
発見が早く、室内に目立った損傷がない場合は、さらに影響が小さくなります。
ただし遺体の発見が数週間〜数か月にわたって遅れた場合は、状況が大きく変わります。
遺体の腐敗によって室内に深刻な汚損や異臭が発生し、特殊清掃を行っても完全な原状回復が困難なケースでは、下落幅が自殺と同程度にまで拡大することがあります。
経過年数や立地によって下落幅は異なる
事故物件の売却相場は、事故の種類だけで決まるわけではありません。
複数の要因が組み合わさることで下落幅は変わります。
事故発生から年数が経つほど、買主の心理的抵抗感は薄れていく傾向にあります。
5年以上が経過した物件は、発生直後の物件と比べて下落幅が小さくなるケースが多く見られます。
都心の人気エリアや駅近物件は需要が高いため、事故物件であっても値下がり幅が限定的になりやすい傾向があります。
反対に郊外や需要の低いエリアでは、事故の影響がより大きく価格に反映されることがあります。
またマンションの一室と一戸建てでは、心理的瑕疵の受け止め方が異なります。
マンションは共用部分が多く、事故が発生した部屋以外への影響が限定されるのに対し、一戸建ては建物全体が事故物件と見なされるため影響が大きくなりがちです。
事故物件を売却する3つの方法
事故物件の売却には、大きく分けて3つの方法があります。
それぞれにメリットとデメリットがあるため、物件の状況や売主の希望に合った方法を選びましょう。
①不動産仲介で一般市場に売り出す
通常の不動産売却と同様に、不動産会社に仲介を依頼して一般の買主を探す方法です。
メリットは、市場価格に近い金額での売却が期待できる点です。
事故物件であっても立地条件が良い物件や築年数が浅い物件には一定の需要があり、買取業者に売却するよりも高値がつく可能性があります。
一方、事故物件であることを告知したうえで買主を見つける必要があるため、売却までに時間がかかる傾向があります。
一般の買主は事故物件に対する心理的抵抗感が強く、内覧の申し込み自体が少ないケースも珍しくありません。
売却を急がず、できるだけ高い価格で売りたい場合に適した方法です。
②事故物件専門の買取業者に売却する
事故物件の買い取りを専門とする不動産業者に売却する方法です。
専門の買取業者は事故物件の取り扱いに慣れており、査定から契約までのスピードが速いのがメリットです。
仲介で一般の買主を探す場合と比べて、売却完了までの期間を短縮できます。
また、買取業者が直接購入するため、仲介手数料が発生しない点もよい点です。
告知義務に関する手続きや特殊清掃の手配なども、業者側がサポートしてくれるケースが多くあります。
ただし、買取価格は一般市場での売却価格よりも低くなるのが一般的です。
買取業者は購入後にリフォームや再販を行って利益を得るビジネスモデルのため、市場価格から2〜4割程度差し引いた金額での買い取りとなることが多いです。
早期の売却を優先する場合や、売却活動の手間を最小限に抑えたい場合に適した方法です。
③更地にして土地として売却する
建物を解体し、土地だけの状態にして売却する方法です。
建物がなくなることで、買主の心理的な抵抗感が軽減される効果があります。
人が亡くなった建物に住むという直接的な忌避感がなくなるため、一般の買主からの関心を集めやすくなります。
また、更地にすることで買主の選択肢が広がります。
注文住宅の建築用地として、あるいは駐車場や事業用地としてなど、さまざまな用途での購入を検討してもらえる可能性があります。
ただし、建物の解体費用が発生する点には注意が必要です。
木造住宅の場合でも100〜200万円程度、鉄骨造やRC造の場合はさらに高額になります。
ただし更地にしても告知義務が消滅するわけではないため、土地の売却時にも事故の事実を告知する必要があります。
建物の老朽化が進んでいる場合や、建物自体に大きな損傷がある場合に検討する価値のある方法です。
事故物件を少しでも高く売るためのコツ
事故物件は通常の物件と比べて売却価格が下がりやすいものの、工夫次第で下落幅を抑えることは可能です。
ここでは、少しでも高い価格で売却するための具体的なコツを紹介します。
特殊清掃・リフォームで物件の印象を改善する
事故物件の売却において、物件の第一印象を改善することはとても重要です。
孤独死などで遺体の発見が遅れた場合、室内に汚損や異臭が残っていることがあります。
特殊清掃の専門業者に依頼して、汚染箇所の除去・消臭・除菌を徹底的に行うことで物件の状態を改善できます。
特殊清掃に加えて、壁紙の張り替えや床材の交換、水回りの修繕といったリフォームを実施することも効果的です。
内覧時に清潔感のある室内を見せられれば、買主の心理的な抵抗感は和らぎます。
リフォーム費用はかかりますが、物件の印象改善によって売却価格の上乗せが見込めるため、費用対効果を見極めたうえで検討する価値は十分にあります。
お祓い・供養を実施して心理的抵抗を軽減する
事故物件の売却前にお祓いや供養を行うことは、買主の心理的な抵抗感を和らげる効果があります。
科学的な根拠の有無にかかわらず、お祓いや供養が済んでいるという事実は、多くの買主にとって安心材料になります。
お祓いの費用は、神社やお寺に依頼する場合で2〜5万円程度が相場です。
売却価格への直接的な影響は測定しにくいものの、比較的少額の投資で買主の心理的ハードルを下げられるため、実施しておくことをおすすめします。
複数の買取業者に査定を依頼して競争させる
事故物件の売却を買取業者に依頼する場合、1社だけに査定を依頼するのは避けるべきです。
買取業者ごとに査定基準や得意とする物件の種類は異なります。
1社だけの査定額で判断してしまうと、本来得られるはずの金額よりも低い価格で売却してしまうリスクがあります。
最低でも3社以上の買取業者に査定を依頼し、提示された金額を比較検討しましょう。
複数の業者が競合していることを伝えることで、各社がより高い金額を提示しようとする効果も期待できます。
査定額だけでなく、買い取り条件(引き渡し時期、契約不適合責任の免除の有無、手数料の有無など)も合わせて比較することで、総合的に最も有利な条件で売却できる業者を選べます。
事故物件の買い取り実績が豊富な不動産会社を選ぶ
事故物件の売却を成功させるためには、パートナーとなる不動産会社の選定が重要です。
事故物件の取り扱いに慣れている不動産会社は、適切な価格設定のノウハウを持っています。
過去の取引事例に基づいた精度の高い査定を行えるため、相場から大きく外れた安値で売却してしまうリスクを避けられます。
実績豊富な会社は、告知義務に関する法的知識にも精通しています。
告知書の作成サポートや、買主への説明の仕方についてもアドバイスを受けられるため、売却後のトラブルも少ないです。
不動産会社を選ぶ際は、ホームページで事故物件の買い取り実績を公開しているか、事故物件専門の窓口を設けているかなどを確認し、専門性の高さを見極めることが大切です。
事故物件の売却で必要な手続き
事故物件の売却は、通常の不動産売却に加えて特有の手続きが必要です。
ここでは、売却の開始から完了までの流れを5つのステップで解説します。
Step1:事故の内容を整理・記録する
売却活動を始める前に、事故の内容を把握し、記録として残すことが最初のステップです。
具体的には、「いつ発生したか」「どのような事故だったか」「物件内のどこで発生したか」「発見までの経緯」「特殊清掃の実施有無」などを時系列で整理します。
警察の捜査報告書、消防の記録、特殊清掃業者の作業報告書、管理組合の議事録など、事故に関する書類がある場合はすべて保管しておきます。
後の告知書作成や不動産会社への説明の際に必要となるためです。
記憶が曖昧なまま売却活動を進めると、告知内容に不正確な情報が含まれてしまうリスクがあります。
早い段階で情報を整理しておきましょう。
Step2:特殊清掃・原状回復を実施する
事故の状況に応じて、物件の特殊清掃や原状回復工事を行います。
孤独死などで遺体の発見が遅れた場合は、特殊清掃の専門業者に依頼して汚染箇所の除去・消臭・除菌を徹底的に行います。
通常のハウスクリーニングでは対応できないレベルの汚損が残っている場合が多いため、専門業者への依頼が不可欠です。
清掃後の状態を確認したうえで、必要に応じてリフォームを検討します。
壁紙や床材の交換、設備の修繕など、内覧時に買主が抵抗感を抱かない状態まで回復させることが理想です。
特殊清掃の費用は部屋の広さや汚損の程度によって異なりますが、ワンルームで5〜20万円程度、ファミリータイプで10〜50万円程度が目安です。
Step3:不動産会社に査定を依頼する
物件の状態を整えた段階で、不動産会社に査定を依頼します。
査定を依頼する際は、事故の内容を隠さず正確に伝えることが重要です。
事故の事実を伝えないまま査定を受けると、後から事故が判明した際に査定額が大幅に下がったり、取引自体を断られたりする可能性があります。
可能であれば仲介での売却と買取業者への売却の両方で査定を取り、それぞれの金額やメリット・デメリットを比較したうえで売却方法を最終的に判断することをおすすめします。
Step4:告知事項を書面にまとめて売却活動を開始する
不動産会社と媒介契約を締結したら、告知事項を書面にまとめる作業に入ります。
告知書(物件状況等報告書)には、事故の種類、発生時期、発生場所、特殊清掃やリフォームの実施状況など、買主の判断に影響を与える情報を漏れなく記載します。
不動産会社の担当者と相談しながら、過不足のない内容にまとめることが大切です。
告知書が完成したら、売却活動を開始します。
不動産ポータルサイトへの掲載や、買取業者への打診などを通じて、買主候補を募ります。
価格設定や販売戦略について、不動産会社と密に連携しながら進めていくことが重要です。
Step5:買主に告知義務を果たしたうえで契約・引き渡し
買主候補が見つかったら、売買契約の締結に進みます。
契約に先立ち、重要事項説明の場で告知書の内容を買主に対して正式に説明します。
宅地建物取引士が書面を用いて説明を行い、買主が事故の事実を十分に理解・納得したうえで契約を締結します。
売買契約書には、告知事項を記載した書面が添付されます。
買主が告知内容を確認したことを証明するため、告知書への署名・捺印を受けておくことが、後のトラブル防止に有効です。
契約締結後は、通常の不動産売買と同様に、残代金の受領・所有権移転登記・物件の引き渡しを行い、売却手続きが完了します。
まとめ
事故物件の売却は精神的な負担も大きいですが、適切な手順を踏み、信頼できる不動産会社のサポートを受けることで、納得のいく条件での売却を実現できます。
まずは事故物件の取り扱い実績が豊富な不動産会社に相談することから始めましょう。
INTERIQでは、事故物件を含む訳あり物件の買い取りを積極的に行っています。
売却にお困りの方は、ぜひお気軽にご相談ください。



