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競売物件にいつまで住める?明け渡し期限と強制執行までの流れを解説

競売物件にいつまで住める?明け渡し期限と強制執行までの流れを解説

「競売物件にはいつまで住み続けられるの?」

「立ち退きを拒否し続けたら、最後はどうなる?」

競売開始の通知が届き、このような不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。

結論からお伝えすると、競売にかかったからといってすぐに退去しなければならないわけではありません。

しかし、「代金納付」の日を過ぎて居座り続けると強制的に退去させられるリスクがあります。

この記事では、競売手続きの全体像を整理し、以下のポイントを詳しく解説します。

この記事でわかること
  • 法的な退去期限:所有権が移る「代金納付」のタイミング
  • 強制退去のリスク:「引渡命令」から「強制執行」までの流れ
  • 立場別の対応:所有者(債務者)と賃借人が退去までに行うべき準備

最悪の事態を回避し、少しでも有利な条件で新生活へ移るために、正しい流れと対策を確認していきましょう。

目次

競売から明け渡しまでの流れ

競売手続きは、債権者(銀行など)の申し立てにより、裁判所が主導して行う法的な手続きです。

「競売開始決定」の通知が届いてから、実際に物件を明け渡す(退去する)までには、通常6ヶ月から8ヶ月程度の期間があります。

具体的なスケジュールの流れは以下の通りです。

STEP
競売開始決定〜現況調査

調査結果をもとに「売却基準価額」が決まると期間を定めて入札が公告されます。

購入希望者が入札を行い、最も高い金額を提示した人が「買受人(新しい所有者)」として決定します。

住宅ローンの滞納などが続くと裁判所が「競売開始決定」を下し、所有者に通知が届きます。

その後、裁判所の執行官と不動産鑑定士が自宅を訪れ、家の状態や占有状況を確認する「現況調査」が行われます。

STEP
入札期間〜開札

調査結果をもとに「売却基準価額」が決まると期間を定めて入札が公告されます。

購入希望者が入札を行い、最も高い金額を提示した人が「買受人(新しい所有者)」として決定します。

STEP
代金納付【所有権の移転】

買受人が裁判所に代金を納付した時点で、物件の所有権は元の持ち主から買受人へと移転します。

法的には、この「代金納付の日」以降、元の持ち主は他人の家に住んでいる状態、いわゆる不法占有となります。

ここが明け渡し期限を考える上で最も重要な分岐点です。

STEP
引渡命令の申立て

代金納付が完了しても占有者が退去しない場合、買受人は裁判所に「引渡命令」を申し立てることができます。

引渡命令が発令されると占有者には法的に強い退去義務が生じます。

STEP
強制執行

引渡命令が出てもなお、任意に退去しない(できない)場合は、最終手段として「強制執行」が断行されます。

これは、裁判所の執行官が鍵を開けて室内に入り、家具や荷物を強制的に運び出し、居住者を退去させる手続きです。

所有者(債務者)の明け渡し期限

元の所有者(債務者)が居住している場合の「法律上の退去期限」と、実際に強制執行される「物理的なリミット」の2つを把握しておきましょう。

法的な期限は代金納付の日

法的な明け渡し期限は、「買受人が代金を納付した日」です。

この瞬間に物件の所有権は買受人に完全移転するため、これ以降の居住は法律上「不法占拠(他人の家に勝手に住んでいる状態)」となります。

多くの買受人は、代金納付後すぐに元所有者と接触し、退去時期についての交渉を求めてきます。

ここでのポイントが、強制執行を避けたいのは買受人も同じという点です。

買受人の心理としては、強制執行には多額の費用と手間がかかるため、「話し合いで穏便に出て行ってほしい。」と思っているのです。

ここに交渉の余地があります。

任意退去に合意することで、「引越し費用(立ち退き料)」の一部を援助してもらえるケースがあります。

元所有者にとっては居留守を使って話し合いを拒否するよりも、この段階で誠実に対応する方が結果的に新生活の資金を確保できる可能性が高まります。

引渡命令の申立てから強制執行まで

話し合いに応じず、任意の退去もしない場合、法的な強制手続きへと進みます。

「代金納付」から実際に追い出されるまでの期間は、早ければ2ヶ月程度、通常は3ヶ月〜4ヶ月程度が目安です。

具体的な流れは以下のようになります。

引渡命令の申立て・発令

代金納付後、買受人の申立てにより裁判所が命令を出します(申立てから1〜2週間程度)。

元所有者に「決定書」が届き、正式に明け渡しを命じられます。

強制執行の申立て

それでも退去しない場合、買受人は強制執行を申し立てます。

執行官の催告(さいこく)

裁判所の執行官が現地を訪れ、「◯月◯日までに退去しなさい」と最終通告を行い、室内に公示書を貼ります。

強制執行の断行

指定日までに退去しない場合、執行官と業者が鍵を開けて突入し、荷物をすべて搬出します。

搬出された荷物は倉庫などで保管されますが、これにかかる運搬費・保管費用は最終的に元所有者(あなた)に請求されます。

賃借人の場合の明け渡し期限

あなたが賃貸借契約を結んで物件に住んでいる「賃借人」の場合、元所有者とは全く異なる扱いを受けます。

賃借人には、民法395条に基づく「明渡猶予制度(あけわたしゆうよせいど)」が適用される可能性が高いためです。

この制度の対象となれば、競売で所有者が変わった(代金納付がされた)日から、6ヶ月間はそのまま住み続けることができます。

6ヶ月間の明渡猶予制度とは

6ヶ月間の明渡猶予制度は、競売という予期せぬ事態が起こったとき賃借人がいきなり住む場所を失わないように守るための制度です。

期間買受人が代金を納付した日から6ヶ月間
権利買受人はこの期間、立ち退きを強制できない
対象者抵当権が設定された後に賃貸契約を結んだ人

ほとんどの賃貸物件は、建物が建った時点(または購入時点)で銀行の抵当権が設定されています。

そのため、一般的な賃貸契約であれば「抵当権設定後」の契約に該当し、6ヶ月の猶予期間が適用されます。

この期間を利用して次の住居を探し、計画的に引っ越しをすることが可能です。

ただし6ヶ月間タダで住めるわけではありません。

猶予期間中も、住んでいる対価(使用損害金)として、従来の家賃と同額程度を支払う義務があります。

代金納付が完了した時点で、家賃を受け取る権利は「買受人」に移っています。

間違えて「元の大家(元所有者)」に振り込んでしまった場合、それは無効となり、買受人から二重に請求される恐れがあるため必ず買受人に連絡し、振込先を確認してください。

もし家賃(使用対価)の支払いを1ヶ月以上滞納し、催告されても支払わない場合は猶予制度の適用が解除され、6ヶ月を待たずに強制退去となるリスクがあります。

猶予が認められないケース

すべての賃借人が6ヶ月の猶予が認められるわけではありません。

以下のように契約のタイミングによって扱いが異なります。

競売開始決定「後」に契約した場合

即時退去となります。

すでに競売手続きが始まっていることを知りながら契約したとみなされ、保護の対象外です。

買受人は代金納付後、すぐに引渡命令を申し立てることができます。

抵当権設定「前」から契約している場合

退去する必要はありません。

契約期間が満了するまで住み続ける権利があります(更新も可能)。

ただし、これは非常に古い契約などに限られる稀なケースです。

強制執行を避けるための「任意退去」のすすめ

ここまで解説した通り、引渡命令や強制執行は心理的・金銭的に大きなダメージを伴う法的手続きです。

これらを回避し、少しでも平穏に新生活へ移行するためには、買受人と話し合って自ら退去する「任意退去」が最も望ましい解決策です。

任意退去の3つのメリット

居座り続けることにはリスクしかありませんが、任意退去には多くのメリットがあります。

プライバシーと尊厳を守れる

強制執行となれば裁判所の執行官や作業員が大勢で押し寄せ、家から荷物を運び出します。

この騒ぎは近隣住民の目に触れることになり、精神的な苦痛は計り知れません。

任意退去なら通常の引越しと同じように誰にも事情を知られず退去できます。

余計な費用の請求を避けられる

強制執行にかかる費用(執行官の手数料、鍵の解錠費、荷物の搬出・保管費など数十万円)は、最終的に元占有者(あなた)に請求されます。

任意退去すればこれらの費用は発生せず、経済的な負担を最小限に抑えられます。

買受人とのトラブルを防ぐ

買受人の心証を害して強制執行に至った場合、退去後の残債務の交渉や、損害賠償請求などで不利になる可能性があります。

誠実に対応することで、無用なトラブルを防げます。

引越し代(立ち退き料)交渉の余地はある?

結論から言えば、引越し費用の交渉ができる余地は大いにあります。

本来、買受人(落札者)には引越し代を支払う法的な義務はないはずです。

なぜ、義務がないのにお金を払う買受人がいるのでしょうか?

それは、買受人にとってやはり「強制執行」は避けたい最終手段だからです。

裁判所を通じて強制的に立ち退かせるには、多額の予納金や数ヶ月の時間がかかります。

買受人からすれば、「強制執行に手間と費用をかけるくらいなら、その一部を引越し代として渡して1ヶ月早く平和に出ていってもらう方が得だ」という経済合理性が働くのです。

金額は物件や事情によりますが、10万円〜30万円(多くて50万円)程度が一般的です。

これ以上は強制執行の費用を上回ってしまうため、買受人が応じるメリットがなくなります。

交渉のコツは「いつまでに出て行くか」を具体的に提示することです。

交渉のポイント

悪い交渉例(逆効果)

「お金をくれないと絶対に出て行かない!」

結果: 高額な要求や脅しと受け取られると買受人は「話し合いは無理だ」と判断し、粛々と強制執行の手続きを進めてしまいます。

良い交渉例(効果的)

「◯月◯日までに必ず退去します。つきましては、新生活の準備のために引越し費用の一部を援助していただけないでしょうか?」

具体的な退去日を約束することで買受人に確実に明け渡してもらえるという安心感を与え、交渉に応じてもらいやすくなります。

ただし、口約束はトラブルの元です。

「言った、言わない」の水掛け論にならないよう合意したら、必ず書面を取り交わしてください。

明け渡し(退去)までにすべき具体的な準備

競売物件からの退去は期限が決まっているため、計画性が求められます。

ここでは退去までにしておきたい準備についてお伝えします。

新居探し

自宅が競売にかかってしまった方にとって最大のネックとなるのが「新居の入居審査」です。

住宅ローンを滞納している場合、信用情報機関に事故情報(いわゆるブラックリスト)が登録されている可能性が高く、信販系(クレジットカード会社関連)の賃貸保証会社の審査には通らないことがほとんどでしょう。

対策として不動産会社に包み隠さず事情を相談することをおすすめします。

信用情報を厳しくチェックしない独立系の保証会社や、大家さんが直接審査する物件を紹介してもらえる可能性があるからです。

また、自治体の公営住宅やUR賃貸を検討するのも一つの手です。

どちらも過去の信用情報よりも現在の収入や貯蓄を重視する傾向があります。

いずれにせよ審査には時間がかかることが予想されるため、退去期限の2〜3ヶ月前から動き出すのが理想的です。

引越しの手配

引越し業者の手配は、遅くとも退去期限の1ヶ月前には開始しましょう。

強制執行や立ち退き料の交渉をしている最中であっても、水面下で見積もりだけは取っておくべきです。

費用を抑えるために複数の業者から相見積もりを取りましょう。

比較することで数万円単位の節約になることも珍しくありません。

できるだけ荷物を減らし、不用品は早めに処分を進めておきましょう。

郵便物の転送手続き

退去後も、裁判所や債権者(銀行など)から重要な書類が届く可能性があります。

受け取り損ねると知らない間に不利な手続きが進んでしまうリスクがあるため、確実に受け取れるよう手配が必要です。

郵便局の窓口やインターネット(e転居)で転送サービスを利用します。

手続きは無料ですが、タイミングには注意が必要です。

あまり早すぎるとまだ居住中に郵便物が新居へ転送されてしまうため、退去日の1週間前から3日前に行うのがベストです。

あわせて、金融機関、保険、携帯電話、役所での住民票異動など生活基盤となる各種住所変更も忘れずに行いましょう。

まとめ

競売物件にいつまで住めるかについてお伝えしました。

所有者の場合は代金納付後、実質的に2ヶ月から4ヶ月程度で退去を迫られますが、賃借人の場合は6ヶ月の明渡猶予期間が認められます。

ただし、賃借人でも猶予期間中の賃料支払いを怠れば、この保護を失う可能性があります。

強制執行という事態を避けるためには、買受人との任意の話し合いが重要です。

早期退去と引き換えに立ち退き料を得られる可能性もあります。

いずれにせよ期限が法的に定められているため、早めに新居探しと引越しの準備を始めることが不可欠です。

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