新しい家を購入するための資金確保や、他県への引っ越しなどの理由で家を売却する方は少なくありません。しかし、売却する家に必ずしも問題がないとは限らず、その問題が原因で家の売買が成立しないか心配する方もいるでしょう。
本記事では、家に関する問題のなかから雨漏りが発生している家に焦点を当て、売却時の具体的な注意点や高く売るためのポイントについて解説します。雨漏りが発生している家の売却を検討している方は、ぜひ最後までご覧ください。
雨漏りした家は売却を急ぐべき?放置すると危険な理由
雨漏りが発生した家を売却する場合、可能な限り売買を早く成立させることが重要です。以下では、売却を急ぐ方がいい理由を解説します。
劣化の進行
雨漏りが発生した家の売却を急ぐ理由として、劣化の進行が挙げられます。家は時間の経過とともにさまざまな場所に劣化が発生するため、定期的な修理は欠かせません。
そして、雨漏りは家の劣化を進行させる厄介な存在です。雨漏りが発生すると、建物の内部まで水分が侵食します。その結果、内装や外装が腐食する、カビが生えるなどの問題が発生しやすくなり、建物全体の修理を進めなければなりません。
問題となる状況として内装や外装の劣化が挙げられますが、とくに深刻なのは基礎が劣化した場合です。基礎は、建物の強度そのものに影響を与えます。
地震や台風などの自然災害が毎年発生している日本において、強度が落ちた建物で暮らすのは、非常にリスクが高い行為です。そのため、購入を避けられる可能性が高くなります。
シロアリの発生リスク
雨漏りが発生した家は、シロアリが発生するリスクが高まります。シロアリとは、木材を主食とする昆虫です。
土壌や地下に生息しており、暗くて湿気のある場所を好む特徴があります。万が一、雨漏りが発生してしまうと、シロアリが生活しやすい条件が揃ってしまい、家がシロアリ被害に遭う確率が高まります。
シロアリが家で発生すると、シロアリが建材として使用している木材を食い散らかすため、家の耐久性が著しく低下し、住民の安全に影響が出かねません。また、シロアリの駆除や被害に遭った家の修復のために、多額の修理費用を準備する必要があります。
売却価格の低下
売却価格が低下しやすい点も、雨漏りした家が抱えるリスクのひとつです。築年数が同じで間取りも似ている2つの家のうち、片方が雨漏りをしており、片方が綺麗に整備されていれば、多くの購入希望者は後者の家を選択するでしょう。売却価格が同じであれば、なおさらです。
雨漏りは家の価値を著しく落とす欠陥であり、雨漏りが発生している家を売却する場合は相場よりも費用を落とさなければなりません。
少なくとも、雨漏りが発生している原因や箇所の特定、また修理にかかる費用の想定をしたうえで、その分の値下げをする必要があります。
売却に時間がかかる
雨漏りが発生した家は、買主が見つかりにくいため売却に時間がかかりやすいです。とくに、木造住宅の場合、経年劣化が加わることでさらに売却の難易度が高くなるため、その分時間がかかります。
また、雨漏りによって引き起こされる二次被害のリスクも買主が見つかりにくくなる要因のひとつです。具体的には、腐敗やカビの発生、環境悪化によるゴキブリやシロアリの発生、そして漏水による漏電などが挙げられます。
そのため、たとえ相場よりも安い金額を提示しても、高価な新築や品質が保証されている中古住宅に買主が流れる可能性が高いです。
雨漏りが発生した家を売るときの「告知義務」とは?
雨漏りが発生した家を売却するにあたって、売主は買主に対して雨漏りの存在をあらかじめ伝える義務が発生します。
以下では、告知義務の詳細や告知を怠った場合の罰則など、売主に必要な知識を詳しく解説します。
雨漏りは「物理的瑕疵」としての告知義務がある
そもそも告知義務とは売主が買主に対して、物件の瑕疵と呼ばれる欠点や問題点を伝える義務のことです。不動産取引において、物件の瑕疵に関する告知義務は民法により定められており、以下の4種類に分類されます。
- ●物理的瑕疵
- ●環境的瑕疵
- ●心理的瑕疵
- ●法的瑕疵
物理的瑕疵とは、物件の物理的な問題のことです。建物の劣化や耐震強度不足、土壌汚染などが該当し、雨漏りも物理的瑕疵に該当します。
環境的瑕疵とは、購入予定の不動産の周辺環境に関する問題のことです。環境的瑕疵に分類される例として、異臭や騒音が出る施設が近くにある、車の騒音や排気ガスが酷いなどが挙げられます。
心理的瑕疵とは、買主にとって心理的抵抗を抱く問題のことです。自殺、殺人などが過去に発生した事故物件が該当します。
法的瑕疵は、法的な問題、欠陥のことです。具体的には、建築基準法に違反している、防災設備の不備などが挙げられます。
こちらの記事では、訳あり物件を売却するときのポイントについて解説しています。ぜひあわせてご覧ください。
雨漏りの告知義務を怠るとどうなる?
物件の売主のなかには雨漏りの告知義務が原因で、いつまで経っても買主が見つからないと考える方も少なくありません。
しかし、買主を探すために告知義務を果たさず、黙って売買を成立させると、契約不適合責任に問われる可能性があります。契約不適合責任とは、商品に品質不良や品物違いなどの不備があったとき、売主が買主に対して負う責任のことです。
契約不適合責任が認められると、補修費用の請求や売却代金の返還、最悪の場合は損害賠償を請求されます。一度失った信頼は簡単に取り戻せないため、告知義務を怠らないことが重要です。
トラブルを避けるための正しい告知方法
トラブルを避けるためには、正しい告知方法を知っておく必要があります。不動産の瑕疵を買主に伝える方法は、口頭と契約書による書面が一般的です。
口頭では、重要事項だけをまとめて伝えられるのが利点ですが、契約が成立したあとにトラブルとなるリスクがあります。リスクを回避するためには、契約書に確認事項を記載し書面で記録を残すことが大切です。
令和3年10月 に国土交通省が「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を公開しました。物件の売買を行う宅地建物取引業者向けのガイドラインですが、告知義務に関する情報が確認できるため、そちらも参考にするとよいでしょう。
雨漏りした家を修理して売却するメリット
雨漏りした家を売却するにあたり、雨漏りしている箇所を売却前に修理することで売主にとってメリットが得られる可能性があります。以下では、雨漏りした家を修理してから売却するメリットについて解説します。
資産価値の維持・向上
雨漏りの放置は、家の構造に大きな影響を及ぼし市場価値を大幅に低下させます。時間とともに状態は悪化するため、より早い段階での修理を実施することで、資産価値を維持できます。
売却前に修理が済んでいれば物件を良好な状態に保て、より良い条件での売却につながる可能性が高まります。
売却しやすくなる
雨漏りした家を事前に修理すると、そのまま売りに出すよりもスムーズに売却につながる可能性があります。家の購入では、安全かつ清潔な状態が好まれるため、雨漏りをはじめ瑕疵が存在する住宅の売買契約を成立させるのは困難です。
しかし、売れないからといって住宅を所有し続けるのも、さまざまなリスクを招くためおすすめできません。たとえば、住宅を所有し続ける代表的なデメリットとして、固定資産税の負担が挙げられます。
固定資産税とは、住宅をはじめとする固定資産にかかる税金のことです。地方税の一種で、資産価値に応じて算定された税額を、固定資産の所在する市町村に納めます。
雨漏りが発生していても物件である以上固定資産が発生しますが、戸建てにかかる年間の固定資産税は平均10〜15万円 です。 地域によっては、年間平均3〜5万円 かかる都市計画税も支払わなければなりません 。いずれの費用も決して安いとはいえず、家計に大きな負担がかかります。
また、住宅は古くなるにつれて価値が下がることはあっても、価値が上がることはありません。値下げをしても、結果的にリフォームや修理にかかる費用も用意しなければならず、買主を見つけるのはより難しくなります。
しかし、あらかじめ雨漏りを修理することで、住宅の瑕疵などのマイナスポイントを減らせます。住宅の築年数が古いとしても住宅機能が担保されていれば、買主が現れる確率は大きく高まります。
売却価格が上がる
売却価格の上昇が期待できる点も、雨漏りしている箇所の修理をしてから売却するメリットです。住宅の売買をするにあたって、価格設定が問題になるケースは決して少なくありません。
住宅の価格は築年数や立地など、さまざまな要素によって決定されます。そして、瑕疵の有無も価格に影響を与える重要なポイントのひとつです。
住宅の雨漏りは、物理的瑕疵が価格を下げる大きな原因となります。前述のとおり、雨漏りによって住宅の基礎をはじめ、さまざまな場所に劣化が発生し、住宅そのものの強度に悪影響を与える可能性が高いからです。
住宅の強度が落ちると、地震や台風が発生した際に倒壊するおそれがあり、リスクが伴う住宅を好んで購入する方は、決して多くありません。そのため、少しでも買主が現れる確率を上げるためには、売却価格を下げる必要があります。
もし、あらかじめ住宅の雨漏りを修理しておけば、物理的瑕疵がなくなるため、物件の価格を下げる要因がひとつ減ることになります。その結果、希望価格、またはそれに近い価格で物件の売却を成立させられる可能性が高まります。
好意的な評価が得られる
雨漏りが発生した家を修理してから売却すれば、好意的な評価が得られます。売却する家の価格は売主が自由に決定できますが、価格相場を厳密に把握し、適切な値段を設定するのは困難です。そのため、多くの場合は不動産会社と相談して決定します。
不動産会社が物件の価格を決定するにあたって、必ず実施するのが物件の内見です。物件の内見では間取りや立地、設備などを総合的にチェックします。
もちろん雨漏りも内見の際にチェックされますが、雨漏りしている物件に対して高評価を与える不動産会社はまずいません。最終的には、相場よりもかなり低い金額を提示される可能性が高いです。
しかし、物件の雨漏りをあらかじめ修理しておけば、不動産会社に対してよい印象を与えられるため、売却価格を極端に低く設定される心配はありません。また、買主に対しても好印象を与えることで、最終的な物件価格の交渉を有利に進められる可能性もが高まります。
雨漏りした家を修理して売却するデメリット
雨漏りした家を修理して売却すると、さまざまなメリットが得られる一方で、考慮しなければならないデメリットも存在します。以下では、具体的な雨漏りした家を修理してから売却するデメリットを解説します。
これから雨漏りしている家の売却を検討している方は、両者を比較したうえで、修理を検討しましょう。
修理費用を負担しなければならない
売却前に雨漏りしている箇所を修理するデメリットとして、修理費用を負担しなければならない点が挙げられます。雨漏りを修理するためには、専門知識とスキルが必要です。
しかし、一般の方が雨漏りを修理するのに十分な専門知識とスキルを有しているケースは、ほとんどありません。そのため、基本的には専門業者に依頼して雨漏りしている箇所を修理してもらうこととなります。
修理にかかる費用は、雨漏りしている箇所や規模によって異なります。修理する際に足場が必要となる場合や、修理箇所を特定するための検査に費用がかかる場合もあり、5万~30万円程と幅があります。
修理の必要な箇所が重度であった場合、100万〜200万円程かかる可能性もあるためより高額な修理費用を用意しなければなりません。
費用をできるだけ抑えるためには、複数の業者から見積もりとり、実績の豊富な信頼できる業者に依頼しましょう。
必ず売れるとは限らない
修理をしても、必ず家が売れるとは限りません。家の購入を検討している方には、それぞれ希望する条件があります。人によっては条件を妥協して家の購入手続きまで進む場合もありますが、残念ながら購入を見送られるケースも少なくありません。
とくに、過去に雨漏りをはじめとする問題が発生している家は、たとえ修理によって問題が解決していても告知義務が発生します。その結果、家に対する悪い印象が拭えず、買主が購入に対して二の足を踏んでしまう可能性も否定できません。
また、売却できたとしても、修理にかかった費用を回収できるだけの価格で売却できなかった場合、赤字になってしまいます。状況によっては修理をせずにそのまま売却した方が利益を得られるケースもあるため、修理をするか否かはよく考えて決定しましょう。
雨漏りした家でも高く売るための方法
雨漏りした家は基礎に問題が発生している、家の購入費用とは別に修理費用が追加で必要になるなどの要因から避けられる傾向があります。そのため、価格を安く設定し、できるだけ早く買主を見つけようとする方も多いです。
しかし、雨漏りした家であってもさまざまな工夫によって、相場以上の価格での売却が目指せます。以下では、具体的な高値で売却するための方法を解説します。
修理して売却する
雨漏りした家を高く売却する方法として、真っ先に挙げられるのが修理です。雨漏りしている家と雨漏りしていない家を比較した場合、後者の需要が高く、値段も相場価格で設定できます。
雨漏りの修理を依頼する場合は、信頼できる業者の選定が重要です。業者によっては、修理の相場費用を大きく上回る金額の請求や、修理が十分行われず、結果的に雨漏りの被害を拡大してしまうリスクが伴います。
雨漏りの修理は信頼できる業者に任せることで、より良い条件での売却につながる可能性が高まります。業者に問題ないか判断するポイントとして、工事内容をあらかじめ明確にしてくれる、見積もりを提示したうえで費用の変動の可能性があるかを教えてくれるなどが挙げられます。
ホームインスペクションを受けてから売却する
ホームインスペクションを受けてから売却するのも、雨漏りした家を高値で売却する有効な方法です。ホームインスペクションとは、一般の方にはわからない家の劣化状況や欠陥の有無を、住宅診断士や建築士などの専門家に診断してもらう方法です。
中立的な立場で家の診断を行うため、売主と買主の双方に偏ることなく、より正確な調査・点検が可能です。
診断結果に応じて欠陥箇所を修理する、もしくは被害箇所を告知して売りに出せるため、スムーズに家を売却できるのが、ホームインスペクションを受けるメリットです。正確な診断は、売買契約成立後のトラブル回避につながります。
一方で、ホームインスペクションには検査するための費用が伴い、すべての瑕疵を一度の検査ですべて発見できるわけではないといったデメリットも存在します。
費用相場は、検査を実施する業者や物件の規模によって異なるため、あらかじめ業者の公式サイトやパンフレットなどでチェックしておきましょう。
解体して土地を売却する
雨漏りが発生している家を取り壊して、土地だけを売却するのもおすすめです。雨漏りを修理しても、一度発生した問題の再発をおそれて、購入を避ける方も少なくありません。一度解体すれば家の状態を考慮する必要がなくなるため、売却できる可能性が高まります。
また、住宅用の土地を探している買主だけでなく、駐車場やマンションといった商業利用を狙っている事業者の目にも留まりやすくなります。
そのため、思い切って家だけを解体し、更地の状態で売却した方が、買主が早く見つかるケースもあります。
ただし、建物の解体をするにあたって、解体費用を用意しなければなりません。解体費用がどの程度かかるかは、土地の広さや周辺環境などによって変動します。
木造であれば1坪あたり3万〜5万円程が費用相場で、 30坪の木造住宅の場合、90万〜150万円程の解体費用がかかります 。
決して安い費用ではないため、苦労して更地にしたものの、土地の値段が想像よりも安く赤字になってしまう可能性もあります。
不動産投資家に売却する
買主が見つからない場合は、不動産投資家を探してみましょう。不動産投資家とは、自己資金や不動産投資ローンなどを利用して収益用不動産を取得、利益を獲得している人たちの総称です。
不動産投資家は格安の物件を購入し、それをリフォームしてから転売、もしくは賃貸に出して収入を得ています。そのため、雨漏りをはじめとする瑕疵が存在する家でも、リスクを承知で買い取ってくれる可能性が高いです。
ただし、不動産投資家は利益を目的として購入を検討しているため、条件や価格など細かな交渉をしてくることもあります。交渉次第では、結果的に市場価格よりも低く売却することになる可能性もあるため、譲れない条件などを明確にしておく必要があります。
買取専門の不動産業者に売却する
雨漏りが発生した状態のまま家を売却したいときは、買取専門の不動産業者を利用しましょう。買取専門の不動産業者は修理の知識を有しているだけでなく、シロアリをはじめとする瑕疵が存在する家の活用、および売却のノウハウを有しています。
そのため、雨漏りが発生している家もスムーズな売買が可能です。なお、買取専門の不動産業者に家を売却する場合は、費用相場を把握するためにも必ず複数の業者に見積もりを依頼しましょう。
こちらの記事では、借地権を買い取ってもらう際のポイントや相場を解説しています。ぜひあわせてお役立てください。
まとめ
以上、雨漏りが発生した家を所有し続けるリスクや売却する方法について解説しました。雨漏りが発生した家は、基礎の劣化やシロアリ、カビの発生のリスクが高く、買主から避けられやすいです。
しかし、修理や家の解体、買取業者への売却など雨漏りが発生しても家を売却する方法は存在します。それぞれの方法にメリットとデメリットがあるため、両者を比較したうえで、自身に適した方法で家の売却を目指しましょう。
INTERIQは東京都を中心に、不要になった物件の買取を行っています。老朽化や雨漏りといった買主が見つかりにくいとされる物件も、納得していただける価格で買い取れるよう対応いたします。
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