売却を考えている物件のなかには、孤独死が発生した不動産を所有している方もいるでしょう。事故物件は、通常の物件に比べて低価格で販売されることが多いと言われており、売却に不安を感じている方もいるでしょう。
この記事では、孤独死が事故物件に該当するのかについて解説します。また、事故物件に該当する場合に生じる義務や、孤独死があった物件を売却する際の注意点についても詳しく紹介するので、ぜひ参考にしてください。
孤独死は事故物件になる?
事故物件とは、一般的に入居者が亡くなった場所を指します。しかし、すべてが事故物件になるわけではなく、例外もあります。孤独死が発生した場合も、事故物件に該当する場合とそうでない場合があります。
ここでは、それぞれのケースについて詳しく見ていきましょう。
事故物件になるケース
事故物件に該当するかどうかは「心理的瑕疵」があるかどうかが判断基準となります。心理的瑕疵とは、その物件に対して心理的な抵抗を感じる可能性があることです。しかし、この抵抗感をどれほど強く抱くかは人によって異なります。
国土交通省は、2021年に「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を発表し、以下のような物件を心理的瑕疵があるとしています。
・過去に殺人や自殺、火事や事故などによる死亡事案があった物件
・孤独死、自然死、病死が起き、遺体の発見が遅れ特殊清掃が必要になった物件
出典元:「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」(国土交通省)(https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo16_hh_000001_00029.html)
そのため、孤独死の場合、長期間放置され、特殊清掃が行われた物件は事故物件に該当します。ただし、このガイドラインには法的拘束力はありません。
そのため、不動産を売却する際には、自己判断で事故物件ではないと決めつけず、孤独死の事実を不動産会社に伝えて相談することをおすすめします。事故物件を取り扱う経験が豊富な会社であれば、情報提供を適切に行い、スムーズな取引をサポートしてくれるでしょう。
事故物件にならないケース
孤独死が発生しても、必ずしもその物件が事故物件になるわけではありません。基本的に特殊清掃が必要ない場合、事故物件には該当しません。
特殊清掃が必要かを判断するポイントは、遺体が発見された時間と死因です。遺体が早く発見され、特殊清掃が不要であれば、心理的な抵抗感は少なく、事故物件として扱われることはほとんどありません。
お金 をかけて特殊清掃員を呼ばなくても、通常のハウスクリーニングでもよいのではないかと思う方も多いでしょう。しかし、ご遺体の発見が遅れた場合、強い死臭がします。
また、強い死臭以外にも血液や体液が流れ出るため、床材にしみ込んでしまいます。これらのことが原因で生じるトラブルは、通常のハウスクリーニングでは対応できないため、特殊清掃が必要となります。
孤独死の場合、死亡の経緯が日常的で、遺体が速やかに発見されることが重要です。このような場合、物件は事故物件とは見なされず、通常の市場で売買できます。
孤独死物件の告知義務
孤独死が発生した場合、死因が老衰などで遺体がすぐに発見されると、その物件は事故物件に該当しないため、告知義務はありません。しかし、状況によっては、孤独死が発生した場合でも告知義務が生じることがあります。
ここでは、告知義務とは何か、告知義務が発生する期間や伝えるべき内容について解説します。また、告知義務に違反した場合に生じる可能性のある問題についても紹介します。
告知義務とは
告知義務とは、物件に過去に何らかの瑕疵があり、それが居住者に影響を与える可能性がある場合に、物件の売買や賃貸の際にその事実を伝える義務のことです。この義務は、主に事故物件やそれに類する物件に適用されます。
心理的瑕疵には、過去に自殺や殺人、その他の不幸な事故が含まれます。これらは物件の価値を直接下げる要因ではないものの、住むかどうかの判断に影響を与えるため、事前に告知する必要があります。
たとえば、物件で殺人があった場合、その事実が居住者に不快感を与える可能性があるため、告知が必要です。このような情報は、買い手や借り手が物件に対してどのように感じるかを考慮して適切に伝えることが重要です。
不動産会社や売主は、法律顧問や専門家と相談し、どの情報が告知義務に該当するのか、またその伝え方について慎重に検討することが推奨されます。
告知義務の期間
事故物件に関する告知義務の期間には、法律上の明確な定めが存在しません。そのため、告知すべき期間は、物件の性質や過去に発生した事象の内容、今後の居住者に与える影響の大きさによって異なると考えられます。
一般的に、賃貸物件の場合より売買物件での告知の必要期間が長くなる傾向にあります。売買契約が長期にわたる所有権の移転をともない、過去の事件や事故が新しい所有者に影響を与える可能性があるためです。
とくに、物件が事故物件とされる理由が深刻な心理的影響を及ぼすと考えられる場合、告知義務はさらに長期に及ぶケースが多いです。たとえば、過去に発生した凶悪犯罪や多数の死亡事故などが挙げられます。
このような事案では、買主や借主がその情報を知ったうえで納得のいく決定を下せるようにしなければなりません。そのため、過去にあった事件や事故の詳細を包み隠さずしっかりと伝えることが求められます。
なお、告知義務の適切な期間について不確かな場合や、どの程度の情報を提供すべきか迷う場合は、不動産取引に詳しい法律専門家に相談するとよいでしょう。不動産に関する法律や以前の裁判例から、客観的かつ具体的なアドバイスを得られます。
告知義務を適切に行うことは、将来的に発生するおそれのある法的トラブルを防ぐうえで重要です。
告知すべき内容
国土交通省の「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」によると、以下の内容が告知の対象となります。
●死が発生・発覚した日時
●場所
●死因
●特殊清掃の有無
出典元:「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」(国土交通省)(https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001427709.pdf)
なお、告知する際は亡くなった人と遺族のプライバシーを尊重することが不可欠です。個人の詳細や識別できる情報は伝えないように注意しなければなりません。人としての尊厳を守り、遺族の感情を考慮しましょう。
違反した場合
事故物件に関する告知義務を怠ると、深刻な法的問題を引き起こす可能性があります。告知を省略して物件の取引を進めた場合、後から事実が明らかになった際に、入居者や買い手から損害賠償請求や契約解除を求められるリスクがあります。
これは、買い手が精神的ダメージを受けたり、引っ越しにかかる追加費用を負担することになるためです。実際には、あるケースで自殺が発生したことを告げずに賃貸契約を結んだ結果、賃借人がその事実を知ってから追加経費や慰謝料の支払いを要求したケースもあります。
この事例では、最終的にオーナーが敗訴し、約114万円 を支払うことになりました。こうしたトラブルが発生すると、このように法的責任、不動産の場合は契約不適合責任に問われることになります。
契約不適合責任とは、売却後に発覚した契約内容と異なる不具合について、売主が買主に対して負う責任のことです。たとえば、以下の項目において請求される可能性があります。
●追完請求:不足または必要な修理を行うこと
●代金減額請求:請求された追完が行われない場合
●損害賠償請求:故意または過失による損害があった場合
また、事故物件の情報を開示せずに売却を進めた場合、上記の請求に加えて、売却代金の減額や契約の解除が求められることがあります。告知義務は不動産取引において非常に重要であり、違反した場合の影響は大きいです。
孤独死物件を売却するには
孤独死物件を売却する際の効果的な方法は、以下の2つです。
●不動産会社に仲介してもらう
●不動産会社に買い取ってもらう
それぞれの手段について解説します。
不動産会社に仲介してもらう
孤独死が発生した物件でも、遺体が迅速に発見された場合は、通常の物件と同じように不動産会社に仲介を依頼して売却することが可能です。この場合、物件が事故物件と見なされることはなく、市場価格に近い金額での売却が期待できます。
仲介による売却の最大のメリットは、不動産会社が物件を適切に市場に出し、買い手を探してくれる点です。そのため、高値で物件を売却できる可能性が高まります。また、事故物件に該当していたとしても、価格設定を工夫することで仲介を通じた売却が可能です。
その際には、リフォームを行い物件の印象をよくしたり、内覧時に物件の魅力をしっかりアピールすることが重要です。
一方で、仲介を利用した場合、買い手が見つかるまでに時間がかかることがあります。とくに事故物件の場合は、購入希望者が現れるまでの期間が不確定で、売却が長期化する可能性があります。こうした状況は、売り手にとって心理的な負担となる場合もあるでしょう。
しかし、孤独死が事故物件に該当しない場合や、事故物件としての影響を最小限に抑えられる場合には、不動産会社に仲介を依頼することで、より高値で売却することが可能です。仲介は時間はかかるものの、高額売却を目指す方にとって有力な方法となります。
不動産会社に買い取ってもらう
不動産を迅速に現金化する方法として、不動産会社への直接売却があります。この手段は、事故物件など特殊な事情を抱える物件を所有している売り手にとって、有効な選択肢といえるでしょう。
直接買取では、不動産会社が買主となり、市場に出すことなく物件を購入します。このため、売却に必要な手続きが簡略化され、短期間で取引を完了できるのが大きなメリットです。
また、事故物件に特化した業者に依頼すれば、特殊な物件の扱いに慣れたプロの対応が期待でき、スムーズに売却を進めることが可能です。
一方で、直接買取は市場価格より低い金額での売却となる傾向があります。そのため、できるだけ高く売りたい場合には慎重な検討が必要です。しかし、物件の売却が長引くストレスを回避できる点や、早急に資金が必要な場合には非常に有効な手段といえます。
さらに、直接買取を選ぶことで、プライバシーが保たれるという利点もあります。仲介による売却では広告や公開市場を利用して買い手を探すため、物件の状況が周知されるリスクがありますが、買取ならその心配はありません。
また、物件をそのままの状態で売却できるため、特殊清掃やリフォームといった追加の費用をかけずに済む場合が多い点もメリットです。
よりよい条件で売却するためには、複数の不動産会社から見積もりを取ることが重要です。価格や条件を比較検討し、自分に合った業者を選ぶことで、スムーズかつ納得のいく取引が実現するでしょう。
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孤独死物件の売却価格への影響
孤独死が発生した物件の売却価格は、いくつかの要因によって影響を受けます。具体的には、死亡から発見までの時間、物件の状態、そして周囲の認識が価格に大きな影響を与えます。
一般的に、孤独死の事実が公知のものや発見が遅れたケースでは、価格が著しく下がるケースもあります。また、物件の種類によっても、価格への影響は異なるでしょう。
たとえば、築年数が古い建物やマンションでは、孤独死があったとしても減額率が比較的低めで、0~10% の範囲です。これに対し、築10年以内の比較的新しい物件で孤独死が発生した場合、減額率は10~15% に達する場合があります。
また、孤独死が発生してすぐに発見された場合、事故物件とはならないため、市場価格に近い価格で売却することが可能です。しかし、遺体が長期間放置された場合や発見が遅れて臭気や汚染が激しい場合、特殊清掃やリフォームが必要となるでしょう。
不動産会社による査定時には、上記の要因が総合的に評価されます。実際の売却価格は、市場の需給状況にも左右されるため、事故物件となった不動産でも適切な処理とマーケティングによっては予想以上の価格で売却できることもあるでしょう。
そのため、孤独死があった物件の売却を検討する際は、専門的な不動産業者と相談することをおすすめします。
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孤独死物件を売却する場合の注意点
売却時は、以下の6点に注意しましょう。
●特殊清掃が必要になる場合がある
●事故物件になるかは不動産会社の判断となる
●事故物件を売却できるか確認する
●ローン残債を完済できる価格を設定する
●売却まで時間がかかる可能性がある
●解体して更地にしても告知義務は発生する
それぞれの注意点について解説します。
特殊清掃が必要になる場合がある
孤独死が発生した物件を売却する際には、特殊清掃が必要かどうかを検討することが重要です。特殊清掃とは、通常の掃除では対応できない汚染や臭気を取り除くために行われる専門的な清掃作業です。
遺体が長期間放置されると、体液が床や壁に染み込み、腐敗による強い臭気が発生することがあります。このような汚染や臭気は一般的な清掃では除去できないため、特殊清掃が必要です。特殊清掃では、強力な化学薬品や専用の機材を使用し、必要に応じて床や壁の一部を交換することもあります。
特殊清掃を実施することで、物件の状態を改善し、次の入居者に安心して利用してもらえる環境を整えられます。しかし、これには相応の費用がかかるため、売却を計画する際には、事前に清掃費用を見積もり、必要な予算を確保しておくことが大切です。
事故物件になるかは不動産会社の判断となる
孤独死が発生した物件が事故物件に該当するかどうかは、不動産会社の判断に委ねられます。この判断は、物件が買主や借主に心理的な負担を与える可能性があるかどうかを基準に行われます。
国土交通省が定めた「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」によれば、自然死や病死による孤独死が発生した場合、通常は事故物件とは見なされないとされています。
ただし、具体的な物件の扱いは、不動産会社との綿密な相談が不可欠です。
出典元:「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」(国土交通省)(https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo16_hh_000001_00029.html)
なお、事故物件と判断されると物件の市場価値に影響が及び、購入後のトラブルの原因となる場合もあります。そのため、孤独死の事実を開示せずに売却を進め、後に死の事実が明らかになった場合は契約解除や損害賠償請求のリスクが高まるため、注意が必要です。
事故物件を売却できるか確認する
事故物件の売却は通常の不動産取引と同様に行われますが、不動産会社によって取り扱いの得意分野が異なるため、事故物件の取引に強い会社を選ぶことが重要です。実績が豊富な会社なら、安心して任せられるでしょう。
売却を検討する際は、まず複数の不動産会社に査定を依頼し、その結果や提案内容を比較・検討することが重要です。売却方法としては、専任媒介契約を結ぶか、複数の会社に一般媒介契約を結ぶか選ぶことが可能です。
また、売却が難しい場合は、不動産会社による直接買取を検討することも有効です。この方法では、買い手を探す必要がないため、迅速かつ確実に売却できます。ただし、市場価格より低い価格での取引となることが多いため、あらかじめ理解しておく必要があります。
加えて、買取では、不動産会社が物件のリフォームや改修を実施するため、売主がこれらの費用を負担する必要がありません。そのため、手間を省きたい場合には最適な選択肢となるでしょう。
自分にとって最も適した方法を選ぶために、不動産会社と十分に相談し、慎重に判断することをおすすめします。
ローン残債を完済できる価格を設定する
物件を売る際には、ローンの残債を完済できる価格に設定しましょう。物件の売却額がローン残高を下回ると、売却後も返済義務が残り、抵当権抹消ができなくなる可能性があります。
また、抵当権が残っている状態での物件引き渡しは、抵当権実行リスクを買主に負わせることになり、最悪の場合、物件が競売にかけられる事態も考えられます。売却計画を立てる際は、ローン残高を上回る価格を設定し、安全な取引終了を目指しましょう。
売却まで時間がかかる可能性がある
孤独死があった物件の売却は、通常の物件より長期間を要する場合があります。孤独死が起こった事実が一部の購入希望者にとって心理的な負担となるためです。
たとえ老衰や病死のように法的には事故物件とは見なされないケースでも、買い手のなかには住むかどうかの基準として重視する人が存在します。その結果、物件の価格を下げてもすぐには売れない場合が多く、予想以上に時間がかかることがあります。
売却計画を立てる際には、この点を考慮して余裕を持ったスケジュールを組みましょう。
解体して更地にしても告知義務は発生する
事故物件を解体して更地にした場合であっても、過去に起こった事件や事故の告知義務は消えません。物件が建っていたかどうかにかかわらず、過去に重大な事件や事故があった事実は、買い手にとって大切な情報であり、心理的瑕疵を引き起こす可能性があるためです。
そのため、更地にして死の事実を隠して売却すると、後々トラブルに発展する可能性が高いため注意が必要です。仮に事実を隠した場合、後に告知義務を果たしていなかったとして契約解除や損害賠償請求が発生するリスクがあります。
一方で、状況によっては更地にすることで、物件のネガティブなイメージを軽減できる場合もあります。更地にした場合、事故物件の影響を少なくでき、結果的に高額で売れる可能性も考えられます。
物件の状況に応じて、より高額で売れるのはどちらなのかを考えてみましょう。
まとめ
孤独死があった物件が事故物件に該当するかどうかは、状況や発見のタイミングによって異なります。心理的瑕疵を引き起こすような場合は告知義務が発生しますが、すぐに遺体が発見されたり自然死が確認された場合、通常物件として扱われることもあります。
物件の売却において、孤独死があった場合でも値下がりは大幅にはしないことが一般的です。しかし、発見のタイミングや物件の状態によっては、価格に大きな影響を与えることがあります。より高額で売却したい場合は、事故物件の取り扱いに慣れている不動産会社に相談してみましょう。
孤独死があったなどの事故物件の販売なら、INTERIQにお任せください。INTERIQでは、事故物件やゴミ屋敷、老朽化した物件などの物件でも買取りいたします。一度、買取りを断られた物件でも可能です。
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