借地権の買取相場を紹介!地主に応じてもらえない場合は?

2025.01.08

借地権の買取りは、土地の所有者である地主と借地人の間で行われる重要な取引です。借地人が高齢になったり建物の維持が難しくなったりした場合、借地権を買い取ってもらうことを検討するケースが増えています。

しかし、買取価格の相場や地主との交渉方法について悩む方も少なくないでしょう。

本記事では、借地権の買取相場から具体的な交渉の進め方、さらには地主に応じてもらえない場合の対処法まで詳しく解説します。また、売却に関わる費用や税金についても紹介するため、借地権の売却を考えている方はぜひ参考にしてください。

借地権の買取相場はいくら?

借地権を地主が買い取る場合、そのきっかけが地主の提案か借地人の提案かによって、買取価格の相場が異なります。ここからは、それぞれのケースにおける相場を詳しく見ていきましょう。

地主から提案された場合

地主側から借地権の買取りを提案された場合、一般的な買取価格は更地価格の60〜70%程度となります。 ただし、この割合は、国税庁の路線価図に記載された借地権割合をもとに算出しているため、取引価格を検討する前に借地権割合を確認しておきましょう。

出典:国税庁「路線価図・評価倍率表」(https://www.rosenka.nta.go.jp/

また、地主から提案する場合、引越し費用や新居を構えるための諸費用などが買取価格に上乗せされることが一般的です。これは、地主が「自分で借地を利用したい」「家族を住まわせたい」といった理由で提案してくることが多く、借地人が予期せぬタイミングで移転を余儀なくされる可能性が高いためです。

こうした状況では、専門家に相談しながら、双方が納得できる条件を慎重に詰めていくことが望ましいでしょう。

借地人から提案した場合

借地人が借地権の買取りを提案した場合、借地権割合にもとづいた金額で買取りを望むのが一般的ですが、実際の取引では更地価格の50%程度で成立することが多いです。

借地人から提案した場合、買取価格は地主からの提案時と比べて低くなる傾向にあります。これは、借地人側に何らかの事情があることが多いためです。

また、借地権を第三者に売却する選択肢もありますが、地主の承諾を得る必要があり、譲渡承諾料も発生します。さらに、借地権割合にもとづく価格での売却を目指しても、実際の買主を見つけることは容易ではありません。

そのため、たとえ更地価格の50%程度の価格であっても、地主への売却を選択するケースがほとんどです。複雑な手続きを避けられるうえ、手数料などのコストを考慮すると、第三者に売却するよりも選ばれることが多い選択肢となります。

借地権を買い取ってもらうメリット・デメリット

借地権を地主に買い取ってもらう場合、さまざまなメリットとデメリットがあります。ここでは、地主に借地権を買い取ってもらう際の主なメリットとデメリットについて解説します。

メリット

借地権を買い取ってもらうメリットは、以下のとおりです。

●譲渡承諾料の支払いが不要
地主以外の第三者に借地権を売却する場合、地主に譲渡承諾料(借地権価格の10%程度)を支払う必要があります。しかし、地主に直接買い取って貰う場合は譲渡承諾料が不要となるため、資金面で大きなメリットがあります。

●建物の解体費用が不要
通常、借地権を返還する際には建物を解体して更地にする必要がありますが、地主との合意があれば、建物を残したまま取引できる場合もあります。これにより、解体費用を抑えられます。

●借地料の負担がなくなる
建物を利用する予定がない場合、毎年の借地料は単なる負担となります。とくに有効期間がまだ何十年も残っている場合、毎年の借地料の支払いは大きな重荷となります。しかし、地主に借地権を買い取ってもらうことができれば、必要のない地代の支払いを省けます。

地主に買い取ってもらうことで、継続的な支出から解放される点が大きなメリットです。

デメリット

借地権を買い取ってもらうデメリットは、以下のとおりです。

●市場相場より価格が低い
市場相場より低い価格での取引を求められることが少なくありません。あまり無理な交渉はせず、ある程度譲歩する姿勢も大切です。

●借地人に不利な条件になる
本来、借地権は建物を解体し、更地にしたうえで地主に返還するものです。つまり、地主側は「買い取ってあげている」という立場で交渉に臨んでくることを理解しておかなければいけません。

このような状況から、売買価格の交渉は非常に難しいものとなります。双方の希望する価格には大きな開きがあることも多く、交渉が難航するケースも珍しくありません。

そのため、早い段階で借地権取引に精通した不動産会社に相談し、適切な仲介を依頼することが大切です。

借地権を地主に買い取ってもらう流れ

借地権を地主に買い取ってもらうためには、いくつかの重要なステップを踏む必要があります。ここでは、不動産会社への相談から実際の売買契約の締結、そして借地権の引き渡しまでの具体的な流れについて解説します。

手順1:不動産会社に相談する

まず、地主に借地権を買い取ってもらうためには、不動産仲介会社に相談しましょう。借地人が直接地主に交渉を試みることもありますが、交渉が難航することが多く、最悪の場合、これまでの良好な関係が損なわれてしまうこともあります。

不動産取引には、重要事項説明書や売買契約書の作成、登記の書き換えなど、専門的な知識が必要な事務作業が多く含まれています。素人では対応が難しく、思わぬトラブルを招く可能性が高いです。

不動産会社は、地主との交渉方法に関するアドバイスを提供するだけでなく、交渉そのものを代行してくれることもあります。これにより、スムーズに取引を進められ、トラブルを避けられます。

実際に営業担当者と話すことで、信頼できるパートナーを見つけられ、取引を円滑に進めることができるでしょう。

手順2:借地権の査定を依頼する

地主との買取交渉を始める前に、適正な売買価格を把握するため、借地権の査定を依頼しましょう。借地権の査定では、専門家によって複数の重要なポイントが詳しく調査されます。

査定の際には、まず土地の現状が確認されます。これには土地の形状や実測面積、前面道路の幅員などが含まれます。また、最寄り駅までの距離や周辺の教育施設、商業施設といった地域の利便性も重要な査定要素です。

さらに、路線価などの客観的な指標が価格査定に影響を与えます。その土地に関連する法令上の規制についても調査され、建築可能な建物の種類や構造、高さ制限など、将来の土地活用に関わる要素が考慮されます。

借地権の査定は非常に専門的な分野のため、経験豊富な不動産会社に依頼することをおすすめします。

手順3:地主に買取交渉する

地主との買取交渉では、価格だけでなく、さまざまな条件についても詳細な話し合いが必要となります。とくに重要なのが、物件の引き渡し条件に関する取り決めです。

まず、物件が更地での引き渡しが必要かどうかを明確にする必要があります。建物をそのまま残して取引を進められるのか、または取り壊しが必要なのか、などが重要な要素です。建物の取り壊しが必要な場合、その費用負担をどちらが支払うのかも、事前に合意しておくべき事項です。

さらに、借地の引き渡し期限についても具体的に設定する必要があります。引越しの準備や解体工事にかかる期間を考慮し、現実的でお互いに納得のいく期限を決めることが大切です。

こうした詳細な条件をしっかりと整理し、交渉することで、スムーズに借地権の買取りが進むとともに、後々のトラブルを避けられます。

手順4:売買契約を締結する

双方が合意した取引条件にもとづき、売買契約書を作成して締結します。契約書には、取引価格や支払い方法に加え、建物の引き渡し条件、解体費用の負担、引き渡し期限など、交渉で決定したすべての内容を漏れなく記載する必要があります。

契約書の作成は、将来のトラブルを防ぐための重要なステップです。とくに借地権取引は一般的な不動産取引と異なる特殊な側面があるため、専門的な知識と経験が求められます。

そのため、借地権取引に精通した不動産会社に依頼することをおすすめします。専門家がサポートすることで、スムーズに契約を進められ、安心して取引を完了させられるでしょう。

手順5:借地権を引き渡す

契約で定められた期日までに、地主から残金の支払いを受けた後、土地の引き渡しを行います。引き渡し完了後は、取引内容に応じた適切な登記手続きが必要となります。

建物を借地権と一緒に取引する場合は、所有権移転登記を行う必要があります。この手続きは法的な専門知識が必要となるため、司法書士に依頼するとよいでしょう。

一方、建物を取り壊して借地権のみを引き渡す場合は、建物の滅失登記が必要です。そのため、土地家屋調査士へ依頼するとよいでしょう。

古い物件を売却したい場合、さまざまな注意点があります。こちらの記事では、古い家を売る方法について解説しています。注意点や税制優遇措置も取り上げているため、ぜひあわせてご覧ください。

借地権の売却に関する費用と税金

借地権を売却する際には、さまざまな費用や税金が発生します。取引を円滑に進めるためには、これらの費用を事前に把握し、準備しておくことが大切です。

ここでは、地主や不動産会社への支払い費用、そして売却後に発生する税金について解説します。

地主に支払う費用

借地権を第三者に売却する際には、地主に対して譲渡承諾料を支払うのが一般的です。譲渡承諾料の相場は、借地権価格の10%程度 とされていますが、土地の条件や地域性、さらには地主との関係性によっても変動することがあります。

もし、地主が合理的な理由なく売却を拒否した場合、借地非訟の申し立てを行うことが可能です。裁判所が地主側に正当な理由がないと判断すれば、承諾がなくても第三者への売却が認められます。

ただし、この場合でも裁判所が決定した承諾料の支払いが必要となります。

一方で、地主自身が借地権を購入する場合や譲渡の場合には、譲渡承諾料は発生しません。このように、取引の形態によって必要な費用は大きく異なってきます。

不動産会社に支払う費用

借地権売却の際には、不動産会社への仲介手数料が発生します。これは、取引を仲介し、契約を成立させた不動産会社への報酬となります。

仲介手数料の上限額は宅地建物取引業法によって定められており、その範囲内であれば当事者間で金額を決められます。具体的な上限額は以下のとおりです。

・200万円以下の場合:売却価格×5%+消費税
・200万円超400万円以下の場合:売却価格×4%+2万円+消費税
・400万円超の場合:売却価格×3%+6万円+消費税

この手数料は売買契約締結時に半額を支払い、残りは不動産引き渡し完了時までに支払うというのが一般的な流れです。

売却後に発生する税金

借地権の売却に伴い、売主には譲渡所得税が発生する可能性があります。これは、資産売却による利益に対してかかる税金で、所得税と住民税で構成されています。

譲渡所得税は「借地権の売却価格-(借地権を購入するためにかかった金額+借地権を売却するためにかかった諸費用)-特別控除」という計算式で算出します。取得費には借地権の購入価格だけでなく、仲介手数料や登記費用などの諸費用も含まれるため、正確な記録を保管しておきましょう。

税率は、所有期間によって大きく異なります。

5年以上保有していた場合は比較的優遇され、所得税15%と住民税5%の合計20%となります。一方、5年未満の所有の場合は、所得税30%と住民税9%の合計39%と、約2倍の税率が適用されます。

なお、売却益が発生しなかった場合は課税対象とはなりません。

借地権を買い取ってもらうためのポイント

借地権の買取交渉を成功させるには、いくつかの重要なポイントを押さえる必要があります。ここでは、交渉をスムーズに進めるための具体的なポイントについて解説します。

交渉は慎重に行う

借地権の買取交渉は、専門的な知識と経験が必要です。

地主との関係が良好であっても、金銭が絡む交渉では予期しないトラブルが発生することがあります。とくに、不動産取引に慣れていない借地人が単独で交渉を行うと、適正な価格で合意するのが難しくなる場合もあります。

このようなリスクを避けるためには、不動産の専門家に相談することがおすすめです。専門家は市場価値を正確に査定し、建物の状態や地域性などの要素を総合的に考慮して交渉を進めます。

さらに、感情的になりがちな直接交渉を避け、客観的な立場から双方にとって最適な条件を導き出せます。交渉経過の記録や必要書類の作成など、法的な側面でのサポートが受けられるため、安心して取引を進められます。

解体費用をどちらが負担するか明確にする

建物の取り扱いは、借地権買取交渉における重要な論点のひとつです。多くの場合、地主は更地での引き渡しを希望しますが、この点について明確な合意がないまま価格交渉が進んでしまうことがあります。

とくに注意が必要なのは、建物の解体費用の負担に関する部分です。たとえば、主が更地化を前提とした価格を提示し、借地権者が建物をそのまま残す前提で交渉を進めている場合、両者の認識に違いが生じることがあります。

このような誤解を避けるためには、交渉の初期段階で「建物は残すのか、解体するのか」「解体する場合、その費用は誰が負担するのか」といった条件を明確にし、書面で合意を得ておくことが重要です。

口頭ではなく書面で契約を結ぶ

借地権取引では、口頭での合意は思わぬトラブルの原因となります。最も深刻なケースとして、借地権者が建物を解体した後に地主が買取りを拒否するといった事態が挙げられます。

このようなリスクを回避するためには、必ず書面で契約を結ぶことが重要です。契約書には、以下の内容を明確に記載しておく必要があります。

・売買価格と支払い条件
・建物の取り扱い(解体の要否)
・解体費用の負担者
・契約解除時の補償内容
・引き渡しの時期と条件

とくに、更地化が条件となる場合、地主側の都合で契約が解除された場合の解体費用の補償について、具体的な金額や支払い方法まで詳細に定めておくことが重要です。専門家のアドバイスを受けながら、綿密な契約書を作成しましょう。

建物の登記状況を確認する

不動産取引では、建物の登記状況の確認は最も重要なステップのひとつです。とくに借地権取引では、建物が所有権を証明する重要な要素となるため、登記内容の精査が欠かせません。

たとえば、建物を相続した後に名義変更を行っていないケースがよく見られます。この場合、登記簿上の名義人と実際の所有者が異なることになり、買取りの手続きに支障をきたす可能性があります。

また、築年数の古い建物では未登記のケースがあるため、注意が必要です。まずは管轄の法務局で登記事項証明書を取得し、現在の権利関係を把握することから始めましょう。

訳あり物件の場合、一般的な物件に比べて、借地権の買い手を見つけるのが難しいことがあります。こちらの記事では、訳あり物件を売却する方法について解説しています。売却する際のコツやよくある質問も取り上げているため、ぜひあわせてご覧ください 。

借地権の買取に応じてもらえない場合

借地権の買取交渉が不調に終わった場合でも、借地権者には複数の選択肢が用意されています。ここでは、地主との交渉が難しい場合の具体的な対処法について解説します。

建物買取請求権を行使する

地主が借地権の買取りに応じない場合、借地人には「買取請求権」という権利があります。これは、借地人が地主に対して建物の買取りを依頼できるという権利です。

たとえば、契約期間が満了したり、地主から更新を断られたりした場合、通常は借地人は建物を取り壊して土地を返還しなければなりません。しかし、この場合、借地人が建てた建物が無駄になってしまいます。

そのため、法律ではこのような状況において、借地人が地主に対して建物の買取りを求める権利を与えています。

重要なポイントは、地主はこの請求を拒否できないという点です。たとえ契約書に「建物買取請求権を行使しない」という記載があったとしても、その条項は無効となります。

また、地主がこの請求に応じない場合、借地人は土地の明け渡しを拒否することも可能です。このように、建物買取請求権は借地人の利益を守るための重要な法的手段となります。

第三者に売却する

地主との買取交渉がうまくいかない場合、第三者への売却が有効な選択肢となります。ただし、第三者売却にはいくつかの注意点があります。

まず、第三者に売却するためには、地主の承諾が必要です。地主の承諾が得られなければ、売却は成立しません。承諾を得る際には、承諾料を支払わなければなりません。

この承諾料は、地域の慣習や市場価格によって変動するため、事前に専門家に相談し、適正な金額を把握することが重要です。

借地権を地主に返還する

借地権を地主に返還する方法は、地主にとって費用負担がないため、比較的スムーズに合意が得られやすい選択肢です。しかし、借地人側の負担は決して小さくありません。

返還の際には通常、建物を解体して更地にすることが求められます。解体工事の計画と実施、そして建物滅失登記などの法的手続きを経なければならず、完了までには半年から1年程度の期間 がかかることもあります。

また、経済的な面でも大きな負担があります。借地権取得時の費用や建物の建築費用が回収できないだけでなく、新たに解体費用も発生するため、借地人の金銭的損失は避けられないでしょう。

このように、借地権の返還を選択する場合は、毎月の地代支払いが大きな負担となっている、または早急に解決を必要としている場合のみに限ります。

買取業者に売却する

借地権買取の専門業者を活用する方法も、有効な選択肢のひとつです。買取業者は借地権取引の豊富な経験を持っており、複雑な手続きや交渉を任せられます。

通常の不動産仲介では買主を探すまでに時間がかかり、また仲介手数料も必要です。一方、買取業者の場合は自社で購入するため、これらの課題を解決できます。

実務面でも多くのメリットがあり、地主との交渉や借地非訟手続きなど、専門的な対応が必要な業務を一括して依頼することが可能です。しかし、業者選びは慎重に行い、実績や評判を十分に確認することが重要です。

INTERIQでは、不動産買取り・物件買取りを行っています。事故物件やゴミ屋敷、老朽化した物件などの物件でも買取りいたします。ぜひ一度お問い合わせください。

まとめ

借地権の買取りには多くの選択肢と注意すべきポイントがあります。地主との直接交渉は慎重に進め、建物の取り扱いや解体費用の負担、契約書の作成でも細心の注意が必要です。

また、地主が買取りに応じない場合でも、建物買取請求権や第三者への売却など、複数の対応方法を理解しておくことが重要です。とくに古い建物や相続物件の場合は、登記状況の確認が不可欠です。

こうした複雑な取引を安全に進めるためには、専門家のサポートを受けることをおすすめします。

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