事故物件は資産価値が低く、告知義務があるため、売却がスムーズに進まないのではないかと不安になる方も少なくありません。また、告知義務についての知識が不足していると、後々トラブルになるのではないかと心配される売主も多いでしょう。
本記事では、なぜ事故物件に告知義務があるのか、告知が必要なケースと不要なケースについて解説します。また、告知義務違反によるリスクやトラブルを避ける方法についても紹介するので、ぜひ参考にしてください。
事故物件に告知義務がある理由
まず、事故物件とはどのような物件なのか、そしてなぜ告知義務が発生するのかを確認しましょう。また、国土交通省が定めた「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」についてもあわせて解説します。
出典:国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」(https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo16_hh_000001_00029.html)
事故物件の定義
事故物件とは、簡単にいうと「入居者が亡くなる場所となった物件」のことです。ただし、すべての死亡ケースが事故物件に該当するわけではありません。
たとえば、自然死や不慮の事故死は誰にでも起こり得るため、物件内で発生しても事故物件とはみなされません。 しかし、特殊清掃が必要になった場合は、自然死や事故死であっても事故物件とされます。
また、事故物件には告知義務があります。告知義務は、購入希望者や入居者に対し、心理的な影響を与える可能性のある事実を伝える必要があり、重要事項説明書に記載したうえで、契約時に説明することが義務付けられています。
事故物件に告知義務がある理由は、契約に影響を与える「心理的瑕疵」となる可能性があるためです。心理的瑕疵とは、不動産の取引において、買主や借主が心理的な抵抗を感じる恐れのあることを指します。
そのため、購入者や入居者が不利益を被らないよう、正確な情報提供が求められます。
こちらの記事では、心理的瑕疵物件について詳しく解説しています。ぜひあわせてご覧ください。
ガイドライン制定の背景
亡くなる原因はさまざまですが、大きく分けると「殺人」「自殺」「自然死」の3種類があります。しかし、これらをすべて同じように「事故物件」として扱うべきかどうかの基準は、非常に曖昧です。
「亡くなった部屋=事故物件」と一律に判断されるわけではなく、あくまでも事例ごとに判断されます。
この基準をある程度明確にするため、2021年に国土交通省は「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を制定しました。基準を統一することで、入居・購入後のトラブルを防げます。
ただし、ガイドラインには法的な拘束力はなく、これまでどおり最終的な判断は各不動産仲介業者に委ねられます。
告知が必要なケース
ここでは、国土交通省が定めた「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を参考に告知が必要になる具体的な状況や判断基準について紹介します。
殺人・自殺・事故による死亡
人が亡くなる原因のなかでも、殺人・自殺・事故による死は告知が必要です。これらの原因による死亡は、物件を契約するかどうかの判断に大きく影響を与える可能性があります。
また、ガイドラインによると、死因が不明な場合でも、契約の判断に影響を及ぼす可能性がある場合は告知義務が発生するとされています。
特殊清掃や大規模リフォームの実施
自然死であっても、特殊清掃や大規模なリフォームが行われた場合は、告知義務が発生します。
特殊清掃とは、通常の清掃では取りきれない汚れを落とすための方法です。血液や体液による汚れ、溜まったゴミ、害虫が発生した部屋などに対応するために行われ、専門業者に作業を依頼するのが一般的です。
また、特殊清掃では対応しきれない場合には、大規模なリフォームが行われることもあります。いずれの場合も、殺人・自殺・事故による死亡と同様に、物件契約に影響を及ぼす可能性があるため、告知が必要です。
買主・借主からの事案確認の要求
買主や借主から事案確認を要求された場合、状況に関わらず告知義務が発生します。ガイドラインでは、要求された時点で、死因や経過した期間に関わらず、告知義務が必要だとされています。
ただし、調査によって必ずしも明確な回答が得られるわけではなく、死因がわからない場合や、回答が得られないこともあります。こういった場合には、その旨を依頼者に伝えることで問題はありません。
また、調査結果を告知する際には、プライバシーに関わる情報は伝えてはいけない点に注意が必要です。
社会的影響の大きさからの告知義務
どのような死因であっても、事案が社会的にどれだけの影響を与えるかによって、告知が必要とされる場合があります。
たとえば、以下のようなケースは、社会的影響が大きい事案と判断され、告知義務が発生します。
・全国的に報道された事件が発生した場合
・非常に残酷な事件だった場合
これらの事案は、とくに社会的な注目を集め、物件契約に影響を与える可能性が高いため、告知が必要とされます。
告知が不要なケース
ここでは、告知が不要になる具体的な状況や判断基準を紹介します。しかし、特殊清掃や大規模なリフォームが行われた場合、社会的影響が大きい場合、事案確認を要求された場合は告知義務が発生するため、注意しましょう。
日常生活のなかでの不慮の事故死
一般的な日常生活のなかで起こり得る不慮の事故は、告知義務は必要ありません。告知が必要となるのは、事故死が契約に影響を与える可能性が高い場合です。
たとえば、足を踏み外して階段から落ちたり、喉に食べ物が詰まったりなど、日常生活のなかで誰にでも起こり得るような事故は、不慮の事故として告知義務は発生しません。
老衰や病気による自然死
老衰や病気による自然死には、告知義務は発生しません。これらの死は、不慮の事故死と同様に日常生活のなかで起こり得るものとされます。
しかし、発見が遅れた場合には、臭いや害虫が発生することがあり、通常の清掃では対処できないため、特殊清掃が必要になることがあります。
発生からおおむね3年経過した死亡事案
事故死や自然死で特殊清掃が必要な死亡が発生した物件は、買主や借主が契約を締結するかどうかの判断に重要な影響を及ぼす可能性があるため、告知が必要となります。
ただし、賃貸契約の場合、発覚からおおむね3年が経過した場合には、告知義務がなくなるとされています。
隣接住戸や共用部分での死亡
告知義務が発生する死亡事案であっても、対象物件外の隣接住戸や共用部分での死亡は、原則として告知義務は発生しません。これは、対象物件に直接的な影響がないためです。
告知義務の期間とその後の対応
告知義務は、いつまで必要なのかわからない方も多いでしょう。告知義務の期間は、契約内容や物件の状態によって異なるため、その違いを把握しておくことが重要です。
賃貸契約の場合
賃貸住宅で自殺や他殺などによる死亡や特殊清掃が行われた場合、その事実が発覚してからおおむね3年間は告知義務があると定められています。この3年間を過ぎるまでは、たとえ入居者が変わっても告知をし続ける必要があるということです。
ただし、例外として3年以上経っても告知義務がなくならないケースがあります。ニュースなどのメディアで大きく取り上げられた事件によって事故物件になった、周辺住民の記憶に残り続けるような衝撃的な事案であったなどの場合は、3年以上になります。
ガイドラインが制定される前は、一度入居すれば告知する必要はないとする業者があったようですが、現在は最低3年の告知義務が発生します。
売買契約の場合
売買契約の場合は、告知義務の期限がありません。事案の程度に関わらず、告知義務が発生する事案であれば、どれだけ経過しても告知が必要です。賃貸とは違い、売買は契約による金額が大きいため、買主に与える影響が大きいためです。
更地にした場合
事故物件を更地にしたからといって、告知義務はなくなりません。物件の売買と同じく、期限なく告知が必要です。実際に、国土交通省による「心理的瑕疵の有無・告知義務に関する裁判例」によると、建物が取り壊されても告知義務はあると判断された事例があります。
また、更地にして新たな物件を建てたとしても告知は必要です。その土地で起きた事案として考えて判断するとわかりやすいでしょう。
なお、事故物件は建て替えたからといって資産価値が上がるとは限りません。一見、建て替えると物件が新しくなるため、一般的な物件と同じ資産価値になるのではと思われがちです。
しかし、建て替えても心理的瑕疵が消えないため、相場よりも低い資産価値となるでしょう。解体費用や建て替え費用をかけたうえに資産価値が上がらないとなると、建て替え行為がデメリットになる可能性があるため、注意が必要です。
また、更地にしたからといって必ずしも建て替えられるわけではありません。事故物件が再建築不可物件の場合、法律上新たに建物を建てられなくなります。
再建築不可物件とは、建築基準法で定められた基準を満たしていない土地のことです。建築基準法は1950年に制定されました。これ以前に建てられた物件には基準を満たしていないものがあるため、再建築不可物件が存在します。
このように、たとえ更地にしても、告知義務はなくならずに再建築もできないという状況になる可能性もあります。
告知義務の期間が過ぎた後の対応
告知義務の期間が過ぎた後でも、買主・借主から確認された場合は告知しなければいけません。
賃貸契約において告知義務がなくなった場合でも、期間が過ぎたからといって、売主や貸主から告知する必要がなくなるわけではありません。もし買主や借主から事実確認があった場合、内容は告知するようにしましょう。
事故物件の告知義務違反によるリスク
事故物件に関する事実を告知しないまま契約を結んだ後、買主や借主がその事実を知った場合、補償請求や損害賠償請求がなされる可能性があります。告知義務を怠ったことによるトラブルやリスクは大きく、契約後に問題が発生することを防ぐためには、適切な告知が不可欠です。
ここでは、告知義務違反が引き起こす可能性のあるリスクを紹介します。
補償請求
補償請求とは、契約後に物理的瑕疵による欠陥があった場合に、買主・借主から補修請求されることです。事故物件は心理的瑕疵だけでなく、環境的瑕疵などもあります。補修によって瑕疵の改善が可能と判断される場合は、補償請求されることがあるでしょう。
また、補償請求には物理的な修繕が求められる場合だけでなく、修繕中の仮住まい費用を求められることもあります。
減額請求
心理的瑕疵など、補修で解決できない問題がある場合、減額請求が行われることがあります。事故物件の場合、その資産価値が相場価格から30〜50%ほど下がることが一般的です。
告知をせずに相場価格で契約を進めた場合、買主や借主は「この価格で契約するつもりではなかった」と主張し、減額を求められる可能性が高いです。このような場合、価格を再調整することが求められるでしょう。
さらに、物理的な瑕疵がある場合で、それが修繕不可能だと判断された場合にも減額請求が発生することがあります。物件の状態や状況に応じて、減額請求のリスクが増すため、契約前に正確な情報を提供することが重要です。
契約解除
売主・貸主が補償請求や減額請求に応じない場合、または買主・借主が補償請求や減額請求では解決できないと判断した場合、契約解除を求められる可能性があります。とくに、心理的瑕疵は売主・貸主の信用を失う原因となりやすく、責任を問われます。
告知義務違反に関しては、売主・貸主だけでなく、取引に関わった不動産会社にも責任が問われます。そのため、補償請求、減額請求、契約解除のいずれの場合でも、信頼性を失う結果となり、今後の取引が難しくなる可能性があります。
損害賠償請求
告知義務を怠って事故物件を契約した場合、買主・借主は契約を締結するためにかかった費用を損害賠償として請求できます。
損害賠償に該当する費用には、登記費用、引越し費用、印紙代などが含まれます。契約後にこれらの費用が発生した場合、告知義務を怠ったことが原因であるとされ、損害賠償を求められる可能性があります。
トラブル回避のための対策は?
事故物件を売却したいが、告知義務違反によるトラブルが心配な方には、事故物件の買取に強い専門の買取業者に依頼することをおすすめします。買取業者に依頼することで、さまざまなメリットがあります。
まず、最短で2〜3日以内に売却益を得られることもあり、事故物件を早めに手放し、現金がほしい方にはメリットの大きい売却方法です。また、特殊清掃を行わずにそのまま売却できるため、手間が省けます。
さらに、買取業者は仲介業者のように広告やチラシで不動産を宣伝しないため、近隣住民に知られることなく手続きを進められます。ただし、買取業者が物件を買い取った後、リフォームして再販売する際には広告を出すことがあるため、理解しておきましょう。
そして、買取後は事故物件に関するトラブルや責任を負わなくて済むため、リスクを避けたい方には大きなメリットとなります。
こちらの記事では、事故物件の売却方法について解説しています。ぜひあわせてご覧ください。
まとめ
事故物件は、自然死や不慮の事故死以外の死が発生した場合、心理的瑕疵がある物件とされ、告知義務が生じます。ただし、すべての死が心理的瑕疵に該当するわけではなく、ガイドラインが設けられています。
告知が必要な場合と不要な場合をしっかり理解し、告知義務違反を避けるようにしましょう。告知義務を怠ると、補償請求や減額請求、契約解除に加え、損害賠償請求を受ける可能性もあります。
こうしたトラブルを回避するためには、事故物件専門の買取業者に依頼するのがおすすめです。INTERIQでは、自殺・他殺・事故死などがあった物件でも責任を持って買取りいたします。
また、事故物件だけでなく、ゴミ屋敷や老朽化した物件、需要のないエリアの物件など、どんな物件も買取ります。所有している物件や土地について不明点があれば、どんな些細なことでもお気軽にご相談ください。